国ブン手稿

主にアマチュア採集家が国産ハナムグリ×クワガタの生態に迫るブログです


1.宮古島亜種
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和名:ミヤコヒメハナムグリ

学名:Gametis forticula miyakoana
           Nomura,1959
体長:14.8〜18.1
生息:宮古諸島(多良間島除く)

形態:最も大型化し、白紋が発達する亜種だが八重山亜種との差異は微妙。こちらは鈍い光沢を有する個体が多い反面、八重山亜種は光沢を欠く場合が多いように感じる。ついでに言えば原名亜種ですら奄美を始めとした諸地域で光沢を有する個体群が見られる。また、こちらの方が、上翅の色味は暖色寄りになる個体が多いように感じた。どれも個体差の範囲なので確実なことはいえない。上翅の色彩傾向は腹面にも現れており基本的には赤みがかかった色彩だ。


生態:成虫は各種花に集まる。幼虫は他ハナムグリ類に混じり林縁や海岸林の倒木下や腐葉土中林床中に生息し、羽化時期は固定されていない。海岸性の昆虫にも関わらず、何故か多良間島(リュウツヤ、ガキテンは生息している)には生息していない。

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2.八重山亜種

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和名:イシガキヒメハナムグリ
学名:Gametis forticula ishigakiana 
           Nomura 1959
体長:13.9〜16.6
生息:八重山諸島

形態:前述した宮古亜種と殆ど差異がない。私自身本種の観察事例がほとんどないため断言できないが、様々な標本画像を見ている限り、上翅、腹部共に色味がやや寒色寄りかつ艶消しである場合が多く、全体的に白紋が小型化する傾向にあるように感じた。実の所光沢がある個体ない個体、前胸の白紋が発達する個体、しない個体、様々な形態が入り乱れており統一性はない。もっとも、
正直な所、物流等に紛れて宮古亜種と混じっていてもなんら不思議ではないように感じる。

生態:宮古亜種に同じ。11月にバナトラで採集出来たため、活動時期は比較的長いように感じる。

3.与那国亜種

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和名:ヨナグニヒメハナムグリ
学名:Gametis forticula yonakuniana 
   Nomura,1959
体長:15.2〜17.8mm

生息地:与那国島

形態:最も特徴的な亜種で、殆どの個体が極めて強い光沢に覆われる美麗種。

背面は鮮緑色で腹面は山吹色寄りの緑、色彩の振れ幅は少ない。また、他の亜種と比べて中胸腹突起板が発達する。

生態:宮古亜種に同じ。バナトラ等にもよく集まる。幼虫は海岸のアダン茂み林床程度の環境でも観察できる他、樹洞内のフレークからも得られているようだ。

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この記事は2019年に執筆した物を再編集した物です。

私はミヤマクワガタを知りません。思うにミヤマの成虫採集は国内で最も競技人口が多い種目ではないでしょうか。同時に何十年も続けていらっしゃる方の知識量を前にするとまるで自らが何も知らないかのような錯覚を覚えます。そんなミヤマ採集ですが、灯火で70upは抜けずとも、例の如く幼虫の生息環境については人並み以上に把握しているつもりです。手軽かつ奥が深い成虫採集に取り組む傍ら、この機会に本種の幼虫環境を知っておくこともまた一興なのではないかと思います。

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0.島嶼のミヤマ

本題に入る前に、今回も小話を挟みます。ミヤマは歯型に注目が行きがちですが「足の色」に注目されることはあまりありません。通常ミヤマの脚はケイ節のみに黄紋を呈しますが、黒島や福江島の個体群は腿節にも同様の黄紋を呈することが知られています。福江島のミヤマは比較的個体数が少ないとされていますが、生息数や低地において生き残っている理由など諸々が横浜ミヤマや千葉ミヤマと同様の背景を持っているのではないかと思います。

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また、隠岐西ノ島のミヤマも同様の特徴を呈するようで、複数個体採集した結果どれも横紋を呈していました。

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島嶼のミヤマ自体、腿節の黄紋が固定される傾向にあるのかもしれません。

1.本記事の構成

さて、今回はミヤマ(maculifemoratus)の幼虫生息環境です。最近良く質問されるので、違うお友達の記事も書いてしまおうかと危うく揺れていましたが、引退するまで温存しておきます。少なくともアレは本種の生態とは全くの別物ですし、リュウツヤのお陰で現在巷に出回っている既存情報とも多分に相違が産まれてきているものと思われます。むしろ一周回ってオオシマアオハナムグリの生態記事を参照した方が余程参考になるとすら思いました。ミヤマ幼虫が立ち枯れ地中部に巣食うこと自体は既に広く認知されています。そのため、単純に「立ち枯れ掘ったらミヤマ出ました!」と言った記事では面白みに欠けるでしょう。聞いてるか4年前の自分。本記事ではより解像度を上げるため、ノコギリという最大の競合種とどのような棲み分けをしているかという切り口から、ミヤマ幼虫の生態に詳しく迫ります。

ちなみにミヤマの幼虫は本土産国産クワガタの中でもかなり特徴的で、体毛や丸みを帯び黒々とした太い顎、幼虫ながらに音を発するといった特徴から判別が可能です。

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2.利用する材の状態や枯れ方の相違

両種とも条件に対して寛容な傾向にあり特定の枯れ方に依存しているといったことはありません。加えて、野外においては飼育下で重視されるほど水分量にもこだわりがなく、極端に乾燥していなければ問題なく利用する傾向にあります。肝心の材の様子ですが、簡単に言えば、ミヤマとノコが混成するような地域ではミヤマはやや腐朽が進んだ材を、ノコは生に近い物からかなり腐朽が進んだ材を利用します。この場合ノコとしてはオオクワが入るような綺麗な白枯れ材の埋没部を好むようです。反面、ミヤマのみが生息する高山帯では、ミヤマ自身かなり腐朽の進んだ材からヒメオオが入るような腐朽が浅いものまで広く利用しています。

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要するに、材の好みにうるさい訳ではないため採集の指標としては役に立ちません。飼育的な観点から役に立つ情報を述べるのであれば、やはり断然腐朽が進んでいない材から得られる幼虫の方が大型化する傾向にあります。また、あくまで所感としてですが、生木に近い木から幼虫が出土する場合、個体密度は低くなる傾向にあるように思えました。あくまで予想に過ぎませんが、腐朽の浅い資源は本来消化に適した範囲から逸脱しており、大型化はするものの、生存率自体が下がってしまう餌資源と言えるのでは無いでしょうか。

3.幼虫の生息密度

先程個体密度に触れましたが、本節では同じ材内において多数の幼虫達がどのように暮らしているかといった意味での個体密度に触れます。
ご存知の方も多いかと思いますが、ミヤマやノコはステージごとに生活する場を変えます。

ミヤマは初令〜3令の間は同じ材内で寄り添うように生活し、3令中期になると材を脱出し、地中にて単独生活を送るようになります。

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太もも程度の細さの材から出たミヤマ幼虫ズ

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対照的に、ノコギリの場合は、1.2齢の間はお互い距離を取り単独生活を送り、3令ともなればお互いが触れ合うか触れ合わないかギリギリの距離感で、寄り添うようにして蛹化のタイミングを待ちます。次節にも関係する内容ですが、ミヤマの場合材と地中を広く利用する反面、ノコギリの一生は材周りで完結するという違いがあります。

4.どのように材を齧るか

前節で、両者が各ステージにおいてどこで生活しているか、という点に触れました。双方若齢時は一般のクワガタと同じく材の内部から材を食い進みますが、3令になると特徴的な材の齧り方をします。正確に言えば「どこから材を齧るか」といった点が特徴的です。

ミヤマの場合、幼虫は3令になると程なくして材を脱出し、土中から材を齧るようになります。蛹化直前のギリギリまで材周辺にいるようで、高山帯で立ち枯れを蹴っ飛ばすと、材が割れずとも幼虫が出ることがあります。

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一方ノコギリは3令になっても、材の体積が小さい、状態が悪いといったことがない限り、基本的に材を脱出しません。3令幼虫は材内部に蛹室とは異なる部屋を作り出し、内部で自ら壁を削り木屑を発酵させ劣化させた後摂食するという器用な芸当をこなしています。3令に栄養価の低い餌を与えることで暴れや腹ボテを防ぐといった飼育技術がありますが、上記の生態と繋がっています。勘違いされがちですが、ノコは土などを摂食している訳ではありません。

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5.どこに蛹室を作るか

3令時に過ごす場所は蛹化する場所とも密接に関わっています。両種とも漠然と地中に蛹室を作る旨は知られていますが、やはり一口に地中と言っても棲み分けがなされています。
ミヤマは、地中のかなり深く、1メートル前後の粘土質土壌に蛹室を作ります。勿論そのような深さともなれば立ち枯れの根部が途切れていることも多く、本種がただひたすら鉱石土壌を掘り進んでいることが分かります。長い休眠期間を過ごすには深い安全な箇所で蛹室を作る必要があるのでしょう。


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石等も利用して器用に蛹室を作るようです。

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観察事例が少ないために断言はできませんが、ほとんど全ての個体がある程度の深さに蛹室を作っているものと思われます。ヒメオオ材割りに赴く際、根際を掘ったり立ち枯れを蹴り倒す際に、度々ミヤマの3令幼虫は目撃しています。しかし、新成虫は意図的に掘り起こした際を除いてただの一度も観察したことがありません。このことから、1メートル前後の深い箇所まで潜っているとまでは行かずとも、少なくとも何かの事故で容易に掘り起こされるような浅さには蛹室を作っていないことが予想できます。

一方、ノコギリは土壌さえしっかりしていれば地中の比較的浅い箇所、幼虫時代に巣食っていた材のほど近くに蛹室を作ります。そのためにマイマイカブリやオサムシを採集する方々が根返り等から新成虫を掘り出す事例が多々存在するわけですね。

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以上のように、生活圏が被る両種といえども、緻密な棲み分けをなしています。

ちなみに、野外でミヤマ新成虫を掘り当てるメリットがあるのかと聞かれれば、ほとんどありません。夏季であればいとも簡単に採集できる本種ですが、新成虫を掘り出すともなれば土石混じりの土壌を1メートルほどひたすら掘り進むという苦行が待っているからです。勿論鉱石土壌中には食痕が残されていないため、掘った先に新成虫がいるかどうかもわからず、ハッキリ言ってコスパが悪いことこの上ありません。そうは言えども、新成虫の輝く金毛と赤みがかった体色は非常に美しく、泥に塗れてでも一見する価値はあります。飼育で見れるだと貴様この野郎成果よりも過程に重きを置く人にとってはチャレンジしがいのあるアクティビティかもしれません。

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私はスジクワにもかなり思い入れがあります。スジクワ材割の記事は高校時代に一度執筆しており(現在は非公開です)当時から「この経験を屋久島で活かし、記事を書く」と決めていました。


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予定通り屋久島でスジを採集したので伏線回収的な意味も込めています。決して密かに応援している知人が屋久島に赴くからといった事情とは無関係です。さて、樹液採集で他種のオマケのように採集されがちなスジですが、幼虫は勿論他種と棲み分けを成しており、狙って採集することも可能です。しかしながら役に立つ場所は現状国内においてただの一箇所、つまり屋久島ぐらいしかありません。私自身書きながらこの記事の存在意義に疑問を覚えています。


1.スジクワあれこれ二つの系統

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スジクワといえば郊外の雑木林や河川敷から、1500メートル級の高山まで生息している愉快なお友達です。山地性の傾向が若干なきにしもあらずといった感じですが、低地に生息する個体群の方が大型化する傾向にあります。では、高山地帯で採集できるスジクワは大型化しないのでしょうか?あくまで噂ベースとして、高山帯に生息する個体群は野生では大型化しない、とのことです。これは特段私が検証をしたという訳ではありません。高山特有の低温環境が成長を妨げている、といった環境的な要因ではなく根本的に低地の個体群とは系統が違うために大型化しないようです(本当か〜?)

低地〜中山帯に生息する本種は、余程の小型個体でない限り内歯を有します。一方で、高山帯に生息する本種は殆どが内歯がないしょぼくれた2センチ前後の個体が殆どです。低地だからといって、ある程度のサイズが保証されるといったことはありません。あくまで高山帯において内歯が発達するサイズの本種が見られないに留まります。都内の多摩地区など、河川敷といった低標高かつ比較的温暖な環境においてもスジクワは確認することができますが、そのような環境に見られる個体は十中八九小型で、コクワの極小個体と勘違いされ見向きもされない例が多いように感じます。

これらの個体が小型化する要因として考えられるものは二つ、単純に河川敷の暗澹な気候が合わないか、上流の高山ブナ帯から流れ着いた個体群が定着しているかの二つです。河川敷スジをカワラ等で飼育した結果小型個体しかでないようであれば後者の説が有力になってきそうですが、私自身やる気にならないのでどなたかお願いします。この噂話を出したのは単なる蘊蓄披露ではなく幼虫環境の解説に関係があるからです。詳しく見ていきましょう。


2.幼虫環境 低地

まず始めに本種が入る物件を探しやすい環境について触れます。物件と違いこちらは不確定要素を多く含む特徴ですが、傾向として本種は成虫幼虫共に薄暗い環境に生息することが多いように感じます。この傾向が正しいかどうかすら不明ですが、理由付けを行うのであれば下記の通りです。まず、基本的にスジは「綺麗な白色腐朽材」をあまり利用しません。白色腐朽菌は風通しの良い場環境を好む傾向があります。また、そのような環境においては、飛翔という移動手段が支障になりにくくあります。スジと同所的な環境を利用し、生息域が被りがちな種にノコギリがあげられますが、白色腐朽材自体も、それを生み出す飛翔が邪魔にならない環境もノコギリにとって有利なものです。反面、スジが好むであろう薄暗い環境は、得てして高湿度であり、綺麗な白色腐朽材が少ない傾向にあります。一概には言えませんが、このような「薄暗い環境」の例には北側の斜面や木の密度が濃いと言った環境が挙げられます。木の密度が濃い場合、飛翔という手段はあまり好ましいものではありませんが、スジの「基本的に飛翔を行わず、歩行を多用する」といった習性が理に適ったものとなっています。明確な棲み分けとまでは言えないもののノコギリとはうっすらと差別化を図っているように思えます。

環境については以上です。続いて物件(材の様相)について解説します。

本種が入る物件を大別すると

・綺麗に枯れていない埋没材の表皮付近

・上記のような物件の分解が進んだ黒枯れ材

に別れます。綺麗に枯れていない埋没材とはどのような材でしょうか。想像がつきにくいと思いますので、画像を交えつつ確認していきましょう。後者に関してはPCに画像を保存しており現在pcが大破しているため画像をアップロードできません。半年後ぐらいにアップロードされていると思います。

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画像をご覧頂くと共通する特徴がお分かりになるかもしれません。材の外観的な特徴を述べると、黒い線が入っていたり、材の樹皮が消失していること、黄土色に朽ちていること等が挙げられます。まず材に入る黒い線について、材を分解する幾つかの菌が拮抗し合っている境界線だとか、雑菌が混入しているといった説があります。水分が多い埋没材ともなれば様々な菌が繁殖することも納得できます。詳細は不明ですが、この黒い線は多分に水分を含む材に重点的に見られることから、特定菌種による腐朽が成す特徴かもしれません。(マンネンタケ?)
このような材は得手して肉質が悪く、表面や一部が柔らかく他は極端に固い場合が殆どです。硬いと言えども新しく朽ちてないが故に硬いわけではなく、古くなっても尚硬いような材が殆どであるように思えます。れは二つ目の特徴とも合致しますが、樹皮が失われる程度に古くなっても硬いまま残っている材が多いように感じます。硬さは画像で伝わりませんが、下画像はスジが多数入っていた埋没材で、黒い箇所は硬くて削れない材の表面となっています。

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色味に関しては埋没自体が水分を多く含んでいるといった要因が考えられますが、水分量が多いということは、通気性の良い環境を好むカワラ菌とは異なる菌により朽ちている可能性が高いとも言えます。埋没材であっても綺麗な白色腐朽が見られるケースは多々あり、そのような箇所にはノコギリが入りますが、スジは入りません。下画像の材では右からノコギリ、右からスジが出土しました。

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スジの幼虫形状はかなり特徴的なので判別が容易です。言語化は難しいですが、他種のような一般的なC字姿勢とは異なり細長い体躯のために尾の部分が頭の位置より伸びるシルエットや水分が多い材を食す種に見られる腹部の紫がかった内容物等が特徴として挙げられます。

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掘り起こした後の、材をさらに割った際の視覚的特徴を述べたために「結局どんな材を探せばいいんだよ」と怒られそうです。上記の特徴を簡単に言い換えると以下のようになります。
湿度を多分に含んでおり、かつ古めで硬めの白色不朽でない埋没材

一口に埋没材と言えども、倒木が土に埋もれているのか、立ち枯れの根部を指すのかといった違いがあります。結論から言えばどちらも利用しますが、やはり圧倒的に後者に多い傾向があります。このような材は地上部を見ても殆ど芯だけしか残っていなかったり、見るからに貧相で枯れ方が悪いような印象を受けるため判別が容易です。本種が、所謂他種が利用しないような「粗悪な環境」を優先的に利用しているか否かは不明です。少なくとも真っ新な白枯れ等を利用しているケースは殆ど無に等しいかと思われます。少なくとも私は見たことがありません。本種は材のどのような部分を食すのかという点も特徴的です。硬い材を利用すると言えども、スジが材の中心部にまで食い込むことは稀です。大抵の場合スジが入る埋没材の表面には所々柔らかい部位があり、幼虫はそのような箇所から硬い部分に沿うように材の周りを食い進めます。蛹化も同様の場所で行われます。そのため、立ち枯れを蹴飛ばしたりひっくり返した時点で柔らかい部位が分離し、幼虫や新成虫が出てくると言ったことも少なくありません。同時にスジが好んで利用する柔らかい場所は大概硬い部位に囲まれており、割り辛いことこの上ありません。硬い部分を割ろうと獲物を振り下ろしたら、本体に直撃...といった事故が最も多い種だと考えています。

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他にも湿度の高い倒木下部や、細枝、埋没or接地している黒枯れ材にも入りますが、やはりダントツで立ち枯れの根部から多く出ます。逆にノコギリ等と異なりどんな細い木の根でも、どんな粗末な枯れ方でも出るために、粗末な材に狙いを絞ることで本種も狙って採集することが可能です。


3.幼虫環境 高地

続いては高山に生息するスジの環境特徴です。基本的には平地と変わりませんが、こちらの方がより幅広い環境に生息しています。

平地では立ち枯れの根部に圧倒的に多いスジですが、高山帯では立ち枯れは勿論、あらゆる倒木の接地面から出ます。まるでヒラタにおける関東と関西の違いのような印象を受けます。また、高山では同所的にヒメオオやオニクワ、ミヤマが混成します。先程述べた平地におけるスジ材の外見的特徴はヒメオオ材に近いのでは、と感じた人もいるのではないでしょうか。

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実際に高山スジはヒメオオと同じ材から出ますが、スジはより表面の古くなっている箇所を、ヒメオオは内部の未だ硬い箇所を食い進んでいるようです。また、スジが多く出る材に入るヒメオオは得手して小型です。これは、材自体が古くなり過ぎておりヒメオオに適した状態で無くなっていることが原因かと思われます。一口に倒木や立ち枯れと言っても特徴があります。まず、基本的に高山ブナ帯においてクワガタが入る朽木は、平地のサクサク割れる綺麗な白枯れではありません。上画像のように菌が回っているものの、しっかり硬く水分を含んでいるような材を中心に利用します。基本的には分解が浅いとヒメオオが、少し分解が進むとアカアシ、より古くなるとスジ、黒枯れ化するとオニが利用するといった棲み分けをしているようです。ヒメオオ材をブロックハンマーで崩すにはかなりの労力を要しますが、スジが好む材はブロックハンマーで容易く崩せる程度に古くなった物であり、特にアカアシやヒメオオが利用した結果、食跡が縦横無尽に走っているような、苔むした倒木の、設地面から多く得られます。こちらも画像を貼るに越したことはありませんが、高山帯ブナ帯におけるスジの個体密度は、平地のコクワと同程度であり、わざわざ撮影していないという事情から掲載に至っていません。同所的にオニクワガタと混生しますが、オニクワはより水分が多い完全な黒枯れフレークに近い箇所を重点的に利用していることから棲み分けが為されています。

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4.屋久島の事例

続いて、屋久島での事例を紹介します。

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上画像は本土スジの赤みがかった個体です。うーん騙された人もいるんじゃないかなwヤクスジと本土スジの形態差異として、体色だけでなく、内歯の上下長さの違いが挙げられます。ヤクスジの方が一般的に長くなる傾向にあるようですが、皆さんは判別がつきますでしょうか。ちなみに、下画像はどちらも35mm個体です。是非比較してみてください。


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本題です。屋久島においても幼虫の生息環境や物件は変わらず、標高500m前後から多産するように感じます。標高を下げすぎるとコクワが増え上げすぎるとオニが増える印象を受けます。本土であればオニが幅を利かせている環境は高山帯に限られているため、スジ材の条件はさほどシビアではありません。しかしながら、屋久島においては標高500メートル地点においてもオニの個体数が極めて多いため、倒木やただの埋没材といった物件からスジを採集することは少々面倒が伴います。屋久島でスジ材を確実に当てるのであれば、冒頭に紹介したような立ち枯れ埋没部の古くて硬い粗末な枯れ方をしている材を探すことが最短ルートかと思われます。

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三重でスジ材を割りまくっていた時代から屋久島スジを出すことを夢見ていました。結局その些細な夢は叶ったのですが、欠航や天候により夜間の大雨の中、2時間程度しか採集時間を確保できず、肝心の材でも幼虫を4匹とオス成虫を潰すという痴態を犯し、不完全燃焼ここに極まれりといった具合でした。観光等もできなかったため、いずれ再び赴きたいと考えています。



余談ですが、海外においても生息傾向は概ね変わらないようで、台湾でも同様の材から近縁種が得られています。SNSで雲南地域の材割光景を見ている限り、こちらも近縁種が見事に同様の材から得られている旨が窺え感動しました。

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国産スジに限定すればあまり役立たない情報も飼育の材料と捉えれば活用範囲は広がるのではないでしょうか。リョフ、ゴンシャン、フジイetc...スジクワ幼虫の利用環境概説は以上となります。画像という視覚情報を欠くと、これ程にまで説明が難しいとは思いませんでした。むしろ画像があったとしても伝わらない特徴も多々あるので、言語化の訓練が必要かもしれません。更に言えば言語化が上手くできないということは環境の観察事例が足りて無いと言えます。まだまだ改善点はありそうですね。




オオシマアオハナムグリ(nippnoprotaetia)の亜種紹介です。オオシマアオハナムグリの亜種は9種存在しますが、今回は生息地を北から順番に並べ、順番に3種、口永良部亜種、諏訪瀬亜種、中之島亜種を紹介します。北部系という括りですが、学術的にそういった分類や単語が存在するわけではありません。単に私が記事分けの都合で勝手に呼称しているだけであり、他亜種との分類学上の相違等はありません。しかしながら今回紹介する3つの亜種と他の亜種では、形態や生息環境に若干の違いがあるように思えます。

0.北部系亜種の共通生態、形態など

今回紹介する3つの亜種はどれも鹿児島の活火山島に生息する。対して他の6亜種が生息する島において火山活動は見られない。北部系亜種の生息土壌には概して火山灰が入り混じっている一方で、南部系の亜種は粘土質の土壌に生息するという違いがある。また、関連性性は不明であるが、北部亜種は南部系と比べて大型化する、青色の色彩変異が存在する、累代が難しいなどの特徴がある。カラーバリエーション、造形、飼育の難易度、希少価値、どれをとっても国内最高峰と言っても過言ではない非常に魅力的なグループだ。(ちなみに私は本グループの記事を書くためにブログを始めた)
幼虫はシイ林の林床の落葉層(A0.)のさらに下部であるA層(堆積腐植物や細根、無機質土壌が入り混じる層)に生育する。

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幼虫期間は1年半〜2年間前後と長く、かなり分解の進んだ貧栄養の餌をじっくり食べながら成長するようだ。秋〜冬にかけて羽化した成虫は休眠を経て翌年の初夏活動に至る。
オスは比較的細長い上翅を持ち全体のシルエットが長方形に近くなるが、反面メスの上翅は短く全体のシルエットはずんぐりむっくりな雫型になる。雌雄共に他種と比べて点刻が深く密に刻まれる傾向にあるが、オスの前胸は点刻が浅く上翅の点刻もメスと比較してまばら。メスは全身に極めて強く密に点刻が刻まれる。白紋についてもオスの方が発達する。要するに、オスの前胸はツルピカでメスは全体がザラザラ。基本的にオスの前胸は白く縁取られ、腹面にも白紋が入る傾向にある。この特徴はメスにも全く出ない訳ではないため、あくまで傾向。最後に、オスの触覚辺状部や脚部全体、フ節はメスと比較して発達、もしくは長くなる。メスの脚部は太短く、ケイ節に明瞭で幅広な外棘歯を3本揃える。上記の特徴からオスは華美で儚い印象を、メスは渋く強壮な印象を与える。脚部による雌雄判別は言語化すると曖昧に思えるかもしれないが、見慣れると脚を含めた全体の雰囲気で雌雄判別ができるようになるほど性別間で外見に差がある種だ。採集方法や飼育方法は原名亜種に準ずる為、本記事での説明は割愛する。

1.口永良部亜種

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オス個体FullSizeRender
メス個体

和名:クチノエラブアオハナムグリ
学名:protaetia exasperata erabuana 
           Nomura1964
体長:22.0〜24.4mm
分布:口永良部島

形態:背面に鈍い金属光沢を有し、白紋は他亜種に比べて少なく不明瞭。雌雄共に点刻は他亜種に比べ非常に強く刻まれ、特にメスのものは顕著であるため、光沢が余計に鈍くうつる。オスは前胸の点刻が浅く、前胸辺縁部が白く縁取られる。体色のバリエーションは幅広く、鈍色や茶銅色を基色として緑銅色や藍銅色といった変異を呈する。これらの変異は胸部のみ、又は背面のみに現れる場合も少なくない(俗に言うツートンカラー)また、変異の比率は低くなく5頭に1頭程度混じるようだ。最大の特徴はその体躯にあり前亜種中で最も大型化する。光沢や鮮やかさと言う点では他種に劣るものの、点刻の強さや力強いボディが魅力的な種だ。

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オス色彩変異

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オス色彩変異

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メス個体

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メス色彩変異

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メス色彩変異

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メス色彩変異

生態:成虫は6月下旬〜7月上旬の限られた時期に発生するようだ。幼虫は勾配がなだらかなシイ林の火山灰混じりの林床に生育する。個体密度は非常に高く、大木の根元を掘れば必ず観察できると言っても差し支えないほど。これは大木に依存しているわけではなく、単にそのような環境に堆積物が溜まりやすく湿度が一定で保たれているからだと思われる。同島にはシロテンハナムグリ等も生息しているが、林内の林床は本種が占領している。ちなみにシロテンハナムグリは林縁や草原といった箇所に多く生息しており、明確な棲み分けが成されている。

2.諏訪瀬亜種

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(上記個体は全て累代品)ガバ纏ガバ画像申し訳ナス

和名:スワノセアオハナムグリ
学名:protaetia exasperata suwanoseana
           Nomura 1964
体長:19.6〜23.0mm
分布:諏訪之瀬島、悪石島
形態:雌雄共に白紋がほとんど消失する亜種。
体躯は口永良部亜種よりやや小型化するが、点刻は同程度に濃い。体色は深緑色を基調としており、これは同所的に生息するアクセキツヤハナムグリのものと重なる。色彩変異としては個体差の範疇で掲載画像のように桃銅色が重なったり、変異として全身紫銅色、藍銅色の変異が存在するようだ。

生態:アクセキツヤの生息しない諏訪瀬島における本種の発生ピークは6月中旬である一方、アクセキツヤの生息する悪石島ではツヤのピークである6月下旬と本種の発生ピークが被る。バナナトラップやタブ、シイ樹液等から得られる。諏訪瀬には広大なシイ林が広がっているが悪石島での発生源は限られているものと思われる。

3.中之島亜種

pc治り次第メス画像追加予定
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(画像個体は全て累代品)
和名:トカラアオハナムグリ
学名:protaetia exasperata nakana
           (Nakane1956)
体長:19.0〜22.9mm
分布:口之島、中之島、平島

形態:筆者の贔屓目マシマシで語ると、間違いなく国内最美麗種。生息地から察していただければと思うが、ノコギリといいコクワといいつくづく我々は不遇な身の上にあるらしい。上記2種と比べるとやや小型になるが、南方亜種と比較すると大型になる。オスの点刻は他亜種と比べかなり薄く従って光沢も強くなる。オスの白点が発達しやすく、前胸の白紋出現率が高いのも本種の特徴だ。メスは例の如く深い点刻が刻まれる他、上翅に若干の微毛を有する。色調は主に2種類で、掲載画像の通り鮮やかな緑と藍色の個体に大別される。青藍色の個体は偶発的な変異ではなく、割合としては2頭に1頭は得られる程度。青藍色の個体群にはtsujimotoiという型名が付けられている。色彩変異としてはイシガキシロテンのような緑銅色と赤褐銅色が入り混じる個体が存在する。中には青、緑、赤三つを備える個体も。

生態:山間部よりも平地や集落周辺に多いようだ。これは山間部では移入のヤギが下草を食い尽くし、土壌が過剰に乾燥することが理由と思われる。逆に標高を上げるとヤギも減る為本種が得られるようになる。発生ピークは6月下旬〜梅雨明けと短いが、個体数は少なくなく、各種樹液やバナナトラップで得ることができる。

引越し完了次第成虫撮影します

1.基本情報

和名:ハイイロハナムグリ
学名:protaetia (heteroprotaetia) fusca
   Herbst,1790
分類:シロテン属ハイイロハナムグリ亜属
体長:12.0〜17.2mm
生息:小笠原諸島、沖縄以南南西諸島各島
(本来の生息地は東南アジア、オセニア各地)

2.形態

上翅は角度によっては角度によっては若干暗緑色〜紫色が浮かぶ半金属光沢質の黒色を基調とする。小楯板や上翅接合部を除き、灰色〜褐色のベルベット調の被覆物に覆われ、前胸板上翅共に細かい波状の白紋(ベージュ)が刻まれる美麗種。画像の通り、白紋は特に前胸辺縁部と上翅側面、尻部で顕著。オスの腹面は中央部以外白紋と同色の被覆物に覆われるが、メスはこれを欠く。脚部や腹面に体毛を密に有するなど国内ではカバイロハナムグリに比較的近い色調や質感だが、こちらはカバイロハナムグリと比較して一回り程小型になる。頭部辺縁や中胸腹板突起の上辺は直線に近くなる。雌雄は3のポイントから判別可能で上述した腹面の白紋有無や、翅端部、ケイ節を見る方法がある。本種の翅端部は、オスにおいて極めて強く突出するが、メスはしない。前脚ケイ節は他の種に漏れず、メスは明瞭な外棘歯を3本備える一方でオスはこれを欠く。幼虫の形態もカバイロハナムグリに近く、濁った体色に体毛を備え、やや扁平。防御姿勢は幼虫を指で例えると、第一関節のみ曲げるような形。

3.生態

本種は所謂国外からの外来種だ。1985年に小笠原諸島で確認されて以来、宮古諸島や南西諸島近年では進行形で沖縄方面に分布を広げている。厳密には国産ハナムグリでは無いため本稿で取り上げるか否かは迷ったもののサカイシロテンを取り上げた以上例外を作ることが憚られたため仕方なく書くことにした。小笠原諸島には航空機で侵入したとされているが、本土に移入していないにもかかわらず、南西諸島にのみ伝播している点に疑問が残る。また、本種はオセニアや東南アジア各国でも移入が確認されている。筆者の勝手な妄想だが、漂流物等に紛れて太平洋を広く漂っている可能性もゼロではなくそう考えるとロマンがある虫と言えるのではないか。オセニア等にも生息していることから、記載が1790年と比較的古め。
成虫はタブ樹液に集まる他、パプアキンイロクワガタのように、草本を傷付けて給汁する様子が観察されている。図説等で、幼虫は堆肥に生育するとされているが、この堆肥が具体的に何を指すのか(牛糞が入り混じった物なのか、単に植物のみを使用した物なのか)は不明。筆者や知人の経験上だが、生息地の堆肥では観察できなかった。私の経験上、本種幼虫の食性にはリュウキュウツヤやイシガキシロテンに近く、林縁や拓けた場所の腐植物が堆積する箇所から得られた。小柄な体躯にも関わらず飼育下において半年以上の幼虫期間を要することから、発生サイクルは単純な一年一化と思われる。 

4.採集

成虫採集にベストなシーズンや、狙った採集方法があるのかは不明。国内では宮古島や石垣島に個体数が多いようで、秋から春にかけて刈り取られた芝生や林縁低木の落葉が堆積した箇所を適当に掘っていると幼虫が採集できる。

5.飼育

体内時計もなく、飼料も選り好みしないため、適当な市販マットや腐葉土等にぶち込んでおけば勝手に増える。

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