国ブン手稿

主にアマチュア採集家が国産ハナムグリ×クワガタの生態に迫るブログです


原名亜種の解説、及び基礎的な形状や生態、採集飼育方法はこちら

1.喜界亜種

和名:キカイシロテンハナムグリ
学名:protaetia ishigakia kikaiana Nakane1960
体長:17.6〜19.3mm
分布:喜界島

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形態:白紋が最も発達しない亜種だが、点刻は最も顕著に刻まれる。体色は暗緑銅色を中心に赤緑銅色などが出現する。イシガキシロテンハナムグリの中でも最北端に生息する亜種。本亜種が生息する喜界島と、沖縄亜種が生息する沖永良部島や与論島の間には奄美大島、徳之島が存在する。しかしながら興味深いことにこれらの島にイシガキシロテンは生息してない。にもかかわらず、沖縄亜種との移行帯のように白紋の発達した個体もいるようだ。

生態:アダンの熟果やハマユウの花に集まる。出現時期が他亜種と比べて若干短いらしい。

幼虫もどこを掘っても採集できるとか。

2.沖縄亜種

和名:オキナワシロテンハナムグリ
学名:protaetia ishigakia okinawa 
           Kurosawa 1959
体長:18.0〜21.6mm
分布:沖永良部島、与論島、伊平屋島、沖縄本島、粟国島、渡嘉敷島

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形態:灰緑銅色を中心に赤銅色など。沖永良部島でのみ青黒色の個体が確認されている。白紋の発達は原名亜種より弱い。他亜種より小柄だが、伊平屋島の個体は若干大型になるようだ。
不思議なことに沖縄本島と伊平屋島の中間に位置する(伊平屋島に極めて近い)伊是名島という大型の島には生息していない。 

生態:ホルトノキをはじめとした各種花や熟果に集まる。8月上中旬と、他亜種より比較的遅くまで発生する。野生下においてサカイシロテンとの交雑個体が存在するらしい。

3.宮古亜種

和名:ミヤコシロテンハナムグリ
学名:protaetia ishigakia miyakona
           Kurosawa 1959
体長:17.2〜22.6mm
分布:宮古島、伊良部島、多良間島、水納島

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形態:赤褐色や桃色を中心として、若干黄緑色が乗る美麗な亜種。白紋は原名亜種より弱くなるものの、他3亜種よりは強い。島ごとに白紋の変異が大きいらしい。宮古島の個体群はほとんど赤褐色になるが多良間島の個体群は逆にほとんど緑銅色となり、白紋が薄くなるなど、喜界亜種のような形質になる。

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多良間産
生態:タブノキやイヌビワといった花や熟果を利用する。個体数はかなり多く、宮古島でも多良間島でも道端から容易に幼虫が得られる。

4.与那国亜種 

和名:ヨナクニシロテンハナムグリ
学名:protaetia ishigakia yonakuniana
           Nomura,1964
体長:18.9〜22.5mm
分布:与那国島

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形態:紫銅色を中心として色彩変異は殆ど存在しない。白紋は喜界亜種の次に少なく、点刻は喜界亜種の次に明確。余談であるが、学名に基づく和名はヨナ「グ」ニシロテンではなくヨナ「ク」ニシロテン。

生態:アダンやカラスザンショウ、イヌビワ等に集まる。幼虫は海岸沿いの腐植質、現地であれば墓地や公園などの人工的な環境に多い。


今回の記事は特に飼育に役立つ情報はありません。筆者の自己満足で累代障害に対する私見を述べています。
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0.前置き(長いので飛ばしてもOK)

「コロナウィルスは国際刑法7条、平和及び人道に対する罪に違反する」「今回の実験的なワクチン接種はこれらの国際刑法に違反する。ワクチンを勧めた医療機関にはニュルンベルク裁判にて死刑判決がくだされる」先日このようなトンデモ話が耳に飛び込んできた。当初は新手のミームかなにかと考えたものの、Twitter検索をしてみれば2021年の世にも関わらず三四半世紀も前に取り沙汰にされたであろうニュルンベルク綱領の話で溢れかえっているではないか。友人が仮にこのようなことを口にしたとて、5G電波で思考盗聴をされているとアルミホイルを被り出した方がまだ救いようがある。このようなホラ話を、デジタルネイティブ世代の我々は信じるはずもない。

悪魔の証明という話がある。悪魔は存在するか否かという議題について、悪魔の存在を証明するには悪魔を発見すればよい。しかし悪魔が存在しないことを証明するには全宇宙をくまなく捜索しなければならない。理論上は証明可能であるが実際は不可能であるという消極的事実の証明困難性を示す逸話だ。

コロナウィルスの流行やワクチン接種は、世の支配層が画策した人口削減計画の一端である、という陰謀論が存在する。勿論われわれはこれらの御伽噺を聞いたとて、特段深く考えもせず一笑に付してしまう。しかし、40年後に平均寿命が縮んでいないという証明や、子の代孫の代でなんらかの身体異常が出ないことの証明を、我々のような素人がどうしてできようか。ワクチンの有害性が全く存在しないと断言することは不可能に近いと言える。

ではワクチンの有害性や21世紀のニュルンベルク裁判といったホラ話を我々が「ありえない馬鹿げた話だ」と判断できる根拠は何処に存在するのか。それは「皆がそのように言っているから」に尽きるのではないか。この点で我々は、自らが情報リテラシーに長けていると信じつつも、実際は陰謀論を信じる人々となんら大差ないマヌケな人種であることがうかがえる。何故なら陰謀論を信じる人々も我々と同じく「周りの人間が陰謀論を信じているから」という理由で目の前の情報を正しいと決めつけてしまうからだ。

断っておくが、私は既にワクチンを接種済みだし頭にアルミホイルを巻いてトランプ元大統領と共に世界中の児童売春団体と戦ったりはしない。ここまでの長い前置きでお伝えしておきたかったことは「情報を自らの目で検証せずに、周囲の判断基準に流されるがまま信じ込む姿勢はいかがなものなのか」ということだ。

1.昆虫界の陰謀論

近頃まことしやかに囁かれている説がある。
「累代障害、専門店の販売戦略説」 
今回冒頭で陰謀論といった胡散臭いお話や、悪魔の証明という厨二チックかつペダンティックな話題を取り上げたのは他でもなく、累代障害について深く考えるためだ。一説によると累代障害とは専門店が野外品を買わせるための戦略的ミームだという噂がある。果たして累代障害は本当に存在するのだろうか、周りが遺伝などと小難しい話をしているばかりに、自分も物知り顔で、陰謀論を信じる人々が如く目の前の情報を鵜呑みにしてしまっているのではないか。

1-1 累代障害という安息地

専門店や有名ブリーダーが「累代障害」という概念を唱えれば我々のような素人は信じざるを得ない。実際、飼育に失敗した際、累代以外の要因が思い浮かばないこともある。しかし安易に累代の一言に逃げ込んで良いのか、ファンタジーめいた原因に、自らの失敗をなすりつけ、理解する努力を怠って良いのだろうか。弱点を見つけ喉元に噛み付いてこそではないか!それが出来ずして何がブリーダーだと。これが今回の出発点だ。とは言ったものの、結論として現時点で累代障害の有無は証明不可能である。アフィブログのような構成を防ぐため、せめて累代が進むと失敗が確定する、という脳死状態の脱却を目標に以下論を進める。

私は累代について以下のように考えている
遺伝病に罹りやすい遺伝子は少なからず存在する。生物種によって遺伝病に弱い遺伝子を持つ個体の割合は異なる。ハナムグリはこの割合が多いが、決して全ての個体が遺伝病に対して致命的に弱いわけではない。現在ハナムグリ飼育に重要な要素は全て解明されていないことから遺伝病と思われる異常発生の何割かは飼育者の技術不足に起因する可能性が高い。「遺伝病に弱いから」とレッテルを貼り、飼育技術の向上を怠ることこそが最も避けなければならない問題である。

さて、ハナムグリ類は累代障害に非常に弱いと言われている。食性が強いシラホシハナムグリやタイワンシラホシハナムグリでさえf5前後で落ちる個体が増えるほか、カナブン属に至ってはf3以降の累代を聞いたことがない。そのため
累代が進む=絶望的な死といった脳死説が定着しているようだ。

ところで何故ハナムグリが累代に弱いといった説が広まったのであろうか。この度もクワガタムシと対比して考える。累代に強いクワガタムシの例としてネブトクワガタやマルバネクワガタ、ドルクス類が挙げられる。言わば羽化して後食したのちもあまり動かない種類だ。
対して累代に弱い種の代表例にホソアカクワガタやランプリマ類が挙げられる。これらの種類は飛翔性が強く、行動範囲が広い。このことから、移動範囲が狭い虫→累代に強い、移動範囲が広い虫→累代に弱いといった前提条件が導き出せる。当然ハナムグリは飛翔性が非常に強いことから累代に弱いことがうかがえる。
しかし、上記の前提にはいくつか反例が存在する。飛翔性の強いはずのメタリフェルホソアカは確かF13以上の累代個体が存在しているし(ソースが見つからず申し訳ない)現に出回っているパープル系統などは単一の出本からかなり近親交配を繰り返していると思われる。一部のミヤマブリーダーは長年野外品が入荷されていない種でもインブリを維持しているケースも少なくない。オーベルチュールニセシカなど、f1以降で途絶えると言われている種も、野外であれば同一の発生源から発生し、同一の樹液木で交配を行うことで野生下WF1の発生は十分考えられる。知見に乏しく具体的な反例を複数用意できないことが悔やまれるが、兎にも角にも種により累代耐性が画一的に固定されているとは言えなさそうだ。

1-2飼育者の落ち度

しかし現に累代が進めば進むほど、なんらかの障害が発生していることは事実である。これが遺伝病によるものかは断定不可能だ。何故ならハナムグリ飼育において、累代以外の落ち度を全て完璧にクリアしているブリーダーは恐らく存在しないからだ。専門家に頼んで遺伝病検査をしてもらうなどではなく、あくまでアマチュア趣味の延長として累代障害を発見するには累代障害以外の要因が「全て」存在しないことを証明した上で、繁殖に失敗しなければならない。しかし現にハナムグリどころかクワガタでさえも飼育における全ての要素を因数分解できていない以上、累代障害の存在断定は実質不可能と言える。そこで累代障害と混同されがちな飼育における改善すべき問題を幾つか挙げていくこととする。

1.体内時計
先の記事でも取り上げた問題だ。飼育下では室内で飼育することが多い。そのため外気温の変化により正常に機能していた体内時計が壊れ、羽化はするものの繁殖のスイッチが入らないまま寿命を迎えるケース。対策としては屋外飼育や冷蔵庫等を使用した人工的な四季の再現が挙げられる。

2.自力ハッチの失敗
自力ハッチ前に繭玉を割ることで、消化器官が正常に機能しないまま活動に至るケース。餌は食べるので消化不良で死亡する。もしくは消化できずエネルギー切れを起こして飢え死に。
生殖器官ができあがらないまま交接に至り死亡するなど。対策としては繭を割らない、割ってしまった場合は低温下で無理やり活動を阻止するなど。

3.栄養過多による羽化不全
幼虫時代の栄養過多により羽化後なんらかの支障をきたすケース。累代が進むほど、同一の飼料でも分解能力が上がる(所謂エサ慣れ)するのではないか。

4.産卵床や温度帯
単純に実力不足

5.ミネラル欠如(根拠無し)
ミネラルをはじめとした、クワガタ用飼料のみでは補えない養分の欠如。海浜性の種など。

以上のような原因が挙げられるのではなかろうか。それでも解決しない場合、現時点では遺伝病以外の要因を考えることはできない。そのためなんらかの対策が必要だ。

1-3 それでも避けたい遺伝病

そもそも生物が種により、遺伝病耐性が別れたのは何故なのか、自然選択説を取り上げて考えてみよう。
1.生物の個体には、同じ種に属していても、さまざまな変異が見られる。
2.そのような変異の中には、親から子へ伝えられるものがある。
3.変異の中には、自身の生存確率や次世代に残せる子の数に差を与えるものがある。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/自然選択説より(ソースがwikiなのはスルーでお願いします)

つまり進化とは、様々な特徴をもった個体の中から、生存にたまたま有利だった特定の遺伝子を持つ個体群のみが生存競争に生き残る。この淘汰と残存を繰り返すうちに特定の遺伝子が種としての特徴に昇華するといった現象だ。

マルバネクワガタを例に取ってみる。
1.大木のウロフレークを食べて育つ種がいた。
2.初期の状態には種の中でも近親交配に強い遺 伝子と弱い遺伝子が満遍なく存在した。
3.大木のウロという繰り返し使用する狭い環境の中では偶然近親交配が進んでしまった
4.結果的に近親交配に強い遺伝が生き残り、種としての特徴として固定されてしまった。
上記のような流れであれば、分化が古い種では淘汰が進み、種としての特徴が「遺伝病に弱い」「遺伝病に強い」と固定されてしまっているだろう。しかし、種によっては未だ特徴が固定されていない可能性もある。そのためにメタリフェルのように、種としては遺伝病に弱い遺伝子を持つ個体が多いものの、遺伝病に強い遺伝子を持つ個体群も少なからず存在する、といった事例が現れるのであろう。ハナムグリにも同じことが言えるのではなかろうか。恐らく遺伝病に強い遺伝子はどこかに存在する。前節で考察した累代維持の方法を実践すると共に、アタリ遺伝子を引き当てることが現在できる最善の対処法かもしれない。

総括

結局、正しい飼育方法とアタリ個体を引きましょうという陳腐な結論になってしまうが、今回の目的はあくまで「累代障害という正体不明の楽な言い訳に逃げることを防ぐ」所にある。挙げただけでも累代障害と混同されていそうな失敗要因は5つあった。累代障害が存在するならするで良し、しかし1%でも他の失敗要因が予想される以上、既存の情報に囚われることなく常に探求を続ける姿勢が求められるのではないか。

余談

今回は冒頭で、情報の正誤を周囲の基準を用いて判断することの愚かさや危険性に触れた。昆虫業界を見ていると常々主体性に欠けたイエスマンが多いと感じる。彼らの常識とは即ち声が大きい人間の常識だ。千人のフォロワーを持つYouTuberブリーダーが、羽化直後のトカラコクワを真紅血統と言えばそれはWF1とて血統なのだ。(手頃な事例が思い浮かばないので具体例は割愛するが、上記のようなイエスマンを馬鹿にしている連中ですら例外ではない)


昆虫業界には、承認欲求にかられ「バズ」を狙う為に、耳触りが良く「マス受け」する意見を集中的に発信する人々や、声の大きい人間に取り入るべく、コピーアンドペーストに過ぎない意見をさも自らの主張のように声高々に発信する中高生など、実に様々な人種が存在する。とにかく人と同じ意見を言わないと気が済まない連中とでも言えようか。つまり大概のお気持ち表明は共感を得るツールに成り下がってしまっていると言える。勿論SNSの使用方法などそんなものであろうが、少なくとも彼らが顔を真っ赤にしながら驚くべき速さのフリックで打ち込んだ「意見」とは、他者の共感を得るための材料でしかなく、それ以上でも以下でもない。

虫屋の間でよく議論される問題としてソーラーパネルの設置による環境破壊が挙げられる。これらの問題に対して彼らは往々にして不満の声を上げるものの、彼ら自身が具体的な行動を起こすことは殆どない。ソーラーパネルを作る会社が憎いのであれば、環境コンサルの仕事に就くなりゼネコンやエネルギー会社に入社して内側から会社を変えるもよし、行政を志す手もあるはずだ。しかし彼らはSNS上で義憤の声を上げるフリをして「いいね」を飛ばし合い、満足してしまう。SNSを開いたまま携帯を握りしめ翌日目覚めた頃には、壊されゆく自然環境に住まう、野生動物に対しての憐憫感情は綺麗さっぱり抜け落ち、学校や職場、現実社会に対する愚痴を書き込んでいることだろう。つまるところ、彼らの目的は諸問題の解決ではなく、不満を訴えることで人々と繋がること、自らの承認欲求を満たすことだ。

共感を得るための材料として発信された、用途の決まっている陳腐な意見をいくら取り入れたところで、建設的な進展はなしえない。私は決して逆張りをしろだとか、常に他人と違う存在であるべきだと言った主張をしているわけではない。なぜなら他人と違う存在を志す人間は、他人との関係の中でしか自分を定義できない点で、他人と同じことしか言わない人種と全くの同列であるからだ。

私が真に伝えたいことは、巷に溢れている主張や情報の価値を、自らの頭で熟考し、自らや自らが属する共同体の糧とする姿勢の重要性だ。兎にも角にも、皆が同じ意見を盲目的に信じていては技術の進歩や既存課題の解決はありえない。ギネスブリーダーの飼育方法を盲信し、実践したとてギネスブリーダー以上の成果は出ない。常に既存の価値観を疑い自らの目で情報の取捨選択を行い、取り入れた情報をもとに、時には自ら新しい情報を作り出すことが重要だと私は考える。

私の昆虫趣味とは自らの価値感アップデートに他ならない。そのためにクワガタ類に人気で劣っていたとて、未開拓のフィールドが無限に広がっているハナムグリ類の生態や飼育方法の解明に惹かれているのだ。自らが仕入れた情報を繰り返し検討すると共に、自らの足で現地を調査し、繁殖を試み、新しい理論を構築する。そうすることにより自らの凝り固まった思考すら解されていく錯覚に陥る。安易な意見のコピペで得られる浅薄な同意ではなく、上記のような快感を共有できる仲間が増えることを祈っている。


飼育考察応用編の〆は「砂」つまり限りなく無機物に近いものの活用方法だ。現在でも砂はゴライアス等の外国産大型種の蛹化時に使われているが、他にも様々な使い方ができる。

1.繭玉形成

勿論国産種における繭玉作成にも有効だ。繭玉形成に砂を用いるメリットは主に二つある。一つは通気性や湿度の調整、二つは物理的耐久性の確保だ。前者に関して、蛹化時に用土が湿っている際にも赤玉土などを混ぜてやれば乾燥気味に調整が可能だ。また、通気性の確保にも繋がり不全率の低下が見込まれる。後者は言うまでもないが、特にしまったままだと繭玉は崩れやすい。野外でもしばしば砂や土を用いて堅固な繭玉を作る種が多い。

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2.幼虫飼育と糞の形

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画像は野生下におけるキョウトアオハナムグリの糞だ。不明瞭な画像で面目ないが、まるで玉石や碁のようにツヤを帯びていることがわかるのではないだろうか。土壌性の本種やクロカナブンやアオカナブン、カバイロハナムグリはこのような糞をする。そしてこのような糞はクワガタ用資料や腐葉土のみでは形成されない。野外の環境に近づけることが健康を保つ最良手段であるならば、このように砂を混ぜた方が良い結果に働くことは想像に容易い。

3.産卵床に混ぜる

上記の画像を見てもらえればわかる通り、砂混じりの環境で育つ種は多い。そのような種は産卵が難関であるとされていることが多い。産卵報告も「腐葉土を使ったらいつのまにか産んでいた」といったような適当具合だ。彼らのほとんどは黒土や赤玉土、そして砂を混ぜてやれば容易に産卵する。また、分解力が弱い初令の飼料としても有効に働く。

4.ミネラル分の補給

野外にあって飼育下に足りないもの、それはミネラル分だ。木質のみを処理した市販のクワガタマットでは足りない成分も出てこよう。あくまで推測の域を出ないが、それらを補う手段としても有効と思われる。特に海浜性の種においてはうまく活用したいところだ。

ハナムグリ=ばら撒き産卵的な先入観を壊したいがために市議会か何かに立候補しようかな。今回は給餌についても少しだけ触れます。

前回は休眠や成熟に触れた。一般的な読者の関心は恐らく産卵セットの組み方、特に使用する用土にあるのではないか。私は意地が悪いので具体的な銘柄についての記事は一貫して作成しない。今回は産卵セットの組み方を解説する。

1.用土の詰め方と卵座

意外に思われるかもしれないが、彼らは一律でばら撒き産卵を行うわけではない。カナブン属や訪花性のハナムグリはばら撒き産卵が多く、そのような種は卵の外皮も丈夫で大型、かつ土が付着しており見つけ辛い。
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このような種には一般的に知られる土を入れて均等にならす適度で良い。一方でprotaetiaのような種は意外にも丁寧な産卵を行う。彼らの卵は比較的大型になるが、産みたては乳白色を超えた土中でも目立つ純白かつ非常に脆い楕円形のものだ。そのために彼らは土を固めて卵を内部に生みつける「卵座」を作る。

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オオシマアオ、キョウトアオハナムグリ系統では顕著だ。そのために、ケースの半分ほどはマットを固めたほうが産卵数が伸びる。もっとも固めると言えどもクワガタのようにガチガチに固めるのではなく、手で少し押し固める程度のイメージで良い。何故なら彼らは産卵時、土中で部屋のようなスペースを確保するからだ。その部屋が崩れないものの、ある程度潜りやすい程度の詰め方で良い。

2.湿度について

こちらも何故かハナムグリの産卵には乾燥気味というテーゼが広がっている。これは恐らくアフリカのカナブン類が基準となっているからだろう。ちなみに彼らでさえ産卵時にはある程度の湿度があった方が良い結果になる。アフリカ=乾燥しているだろう、という短絡的な思考が見て取れる。ハナムグリ幼虫は本来野外において、地中深くや遮蔽物の陰に産卵され、幼虫時代を過ごし、成長につれて、もしくは蛹化時に乾燥した地表付近などに移動している。飼育下でもこれを再現すると良い。例えば上半分は無加水で下半分は通常通りの加水であったり、餌交換の際にのみ乾燥した用土に変える、など。

3.ハナムグリとバクテリア

定かではないがクワガタと同じようにハナムグリの孵化率や成長率にもバクテリアとの共生状態が大きな要因となっているという説もある。
私はこの説に懐疑的、もしくは微々たる要因だと考えているがいくつか根拠となりうる事例が存在する。

・protaetia類の飼育でマットの嵩やケースのサイズが小さいほど産卵に至るまでの期間が短かった。ネブトクワガタのように自らの糞尿により環境をコントロールしているのではないか 

・一部種でひとたび割り出しを行い撹拌を行なった結果、産卵行動をやめてしまった、もしくは再開までに時間がかかる

・一部種で採卵を行った結果孵化率が低下した

どれも観測事例が少ないほか、他の要因を理由にできることから確信足り得ない。しかし腸内細菌が飼料の分解においてかなりの部分を占めている昆虫である以上可能性としては十二分に考えられる。また、仮に自らバクテリアや細菌数を調整している場合、無闇矢鱈に大きなケースを使ったとて産卵数は変化しない可能性がある。実際に大きなケースを用いようとも、ある程度狭いケースを用いようとも産卵数はさして変わらない。


4.給餌について

今回の記事は微々たる気遣い、成虫の給餌方法に軽く触れて終わらせる。休眠明けにいきなり高タンパク高栄養な餌を与えると卵管詰まりを起こすという説がある。これはハナムグリではなくローゼンベルグオウゴンオニの飼育に関して耳にした事例だ。ハナムグリでそのような事例を観測したことはないが、彼らは所謂お漏らし産卵をする。そして昆虫類の産卵数には限りがある。交尾前に無駄玉を打ってしまってもしょうがない。そのうえ消化器官の負担にもつながる。休眠明けは薄めた餌を与えるのが得策だろう。また、彼らの断食期間は意外と長い。カナブンなど暴れ回る種は2週間ほどであっさり餓死してしまうが、protaetiaなどであれば1ヶ月程度の絶食には堪えるようだ。


1.フヨウドフヨウ論

近頃、度々以下ような問いを目にする。

ハナムグリ幼虫飼育に腐葉土は必須であるか

一般的にハナムグリ飼育=腐葉土と言った俗説が広がっているが、何故腐葉土を用いるのかという点について触れられることは少ない。例えば台湾のワリックツナハナムグリのように産卵時に親虫が落葉を丸めて卵座を作成するといった生態の再現や、カブトハナムグリのように高湿度と通気性を両立した環境を作り出すといった、明確な理由があるならまだしも、こと国産ハナムグリにおいて、漫然と幼虫飼料として腐葉土を用いる必要性は存在するのであろうか。本記事では上記の問いへの答えを導きつつ、腐葉土、もとい飼料の選び方についての回答を述べることとする。

そもそも国産ハナムグリの多くは食性が非常に広い。土壌混じりの落葉から比較的普及が進んでいない朽木まで、幅広く摂食することができる。そのため、一部の難関種と呼ばれる種や飼育方法が未知数な種を除き通常のクワガタマット等で飼育が可能だ。それでも腐葉土を用いるメリットとして、通説では腐葉土を混ぜ込むことによりマットが詰まることを防ぎ、菌糸の発生を抑える、もしくは野外環境を再現しているなどといったもっともらしい理由が挙がる。実際は概して腐葉土にも菌糸は沸くし、ハナムグリ幼虫は野外において(一部を除き)土壌やフレークなどのしっかりした部分に入り込む傾向がある。そもそも土が詰まっていない環境は外気への接触機会を増やすこととなり、従ってカビ等への感染リスクを高めるため好ましいとは言い難い。加えて不純物やカビ等の混入リスクも孕んでおり、腐葉土自体が積極的に用いるべき飼料ではないと私は考える。他にも「繭玉を作りやすくなる」「成虫が潜りやすくなる」といった、何を根拠にしているのか全くわからない俗説が存在するが、これらは全て野外における本来の生態に照らし合わせて考えれば、真っ赤な嘘っぱちであることがわかる。敢えてこの俗説を正当化するのであれば「飼料に腐葉土を混ぜて通気性を良くすることで繭玉作成に好ましい乾燥した環境に近づけることができる」とでも言っておくのが賢明か。こちらも、実際は落葉直下のリター層に生育する種ですら、乾燥した砂と自らの糞や体液を用いて繭玉を作るのだから世話がない。


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オオシマアオハナムグリ口永良部亜種


そんな腐葉土であるが、唯一若干の有用性を見出すことのできる側面が存在する。それは飼料としての「熟度、分解度合い」だ。木質成分を粉砕したクワガタ用マットと腐葉土、どちらが消化しやすいかといえば見当はつくだろう。難関種や未攻略種のように、どれだけ消化能力が強いか判断しかねる種に、分解の進んだ餌を与えることは至極真っ当な判断と言える。しかし当然ながらクワガタマットですら放置していれば分解は進むうえ、分解が進めば腐葉土と同等もしくは腐葉土よりも消化しやすい飼料になりうる。さて、冒頭の問いに立ち返るが、果たしてハナムグリの幼虫飼育において腐葉土は必需品と言えるのであろうか。


2.飼料の最適解

読者の方々はハナムグリを餓死させたことがあるだろうか。当ブログの読者であれば「ハナムグリは飢えには強いが栄養過多には弱い」ことを薄々勘づいていることだろう。結局のところ彼らはどの種類でも例外なく、こと餌の消費量に関しては驚くべき力を見せつけてくれる。そして大概は、累代が進み有害遺伝子が発現した段階で不全を起こす。これが飼育失敗の常習パターンだ。栄養過多による不全を防ぐ方法は二つ存在する。肥満体からコーラを取り上げるかダイエットコーラを与えるかだ些か前者は非人道的なので後者を選ぼう、とすれば全てが解決してしまうが、後者を選ぶ正当な理由にも触れておかねばならない。先にも述べた通り、大概の普通種は既製品のクワガタマット、つまり分解が浅いものであっても、モリモリ分解できる。しかし、累代が進めば、はたまた元々消化能力に優れない種類であればどうであろうか。


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画像はクロカナブンの幼虫を腐葉土で飼育した際の画像であるが、見ての通り腐葉土を使用したとて、尚消化不良や拒食に陥り、「ヒネる」個体が見受けられる。それもそのはずで、彼らは野生下ではほとんど砂のような、腐葉土より分解の進んだ「土壌」を餌としているのだ。また最終的に腐葉土で生き残った個体は野外の個体と比べてかなり大型になったことから、腐葉土ですら種によっては分解が浅い、栄養価に富みすぎた餌であることがわかる。このことからハナムグリの幼虫飼育において万全を期すのであれば、腐葉土よりも更に分解が進んだ餌を使用するべし、と言えるのではなかろうか。

ここで一度冒頭の問いに答える必要がある

Q.ハナムグリ幼虫飼育において腐葉土は必須か
A.必要無し

ここで、一体腐葉土が必要ないのであれば何が必要なのか、といった問いが産まれる。実際のところ、殆どの種は腐葉土で問題なく累代が可能であることから、腐葉土は必須でなくとも用いることはできる。先の例として分解力が極端に弱いカナブン類を取り上げてしまったことは些か極端であったかもしれない。しかし、一部の種には腐葉土すら分解が浅いということは紛れもない事実である。可能であるならば最初から分解の進んだ餌を使用するに越したことはない。人間ですら、二郎系のラーメンを毎日食すか、病院食のような食物を毎日食すか、どちらが健康的であるかを考えれば後者であることがわかる。クワガタ飼育のように、大型化を目指す目的でない、あくまで累代を回すことを念頭においたハナムグリの飼育においては、消化しやすい分解の進んだ餌を大量消費させて成長を促す様をイメージするべきではなかろうか。

3.種別の分解能力

分解が進んだ熟度の高い餌を使うべき根拠は、飼育下よりも野外生態や生育環境を観察すれば明確に見て取れる。本記事で具体的に幼虫の生育環境の写真を載せることはしないが、種別の個別記事にて詳細に記しているため、飼育の参考にしていただきたい。本記事では、文面のみになってしまうが、以下に記す生息環境と筆者の飼育経験から導き出した肌感覚での分解の適正レベルを記述する。また、ここまで分解の強い餌を用いるべき根拠を繰り返し述べてきたが読者方の関心は「結局何使えばいいのよ」といったところであろうから、そちらに関しても特筆が必要なものは併せて記述をした。

1. シラホシ、アカマダラハナムグリ

消化能力が非常に強いグループである。

本来野外では両者とも枝葉が生のまま混じるような環境や木質のフレークに生育している。飼育下においても餌の選り好みは極めて少ないほか、アカマダラハナムグリにおいては市販のマットのみでは栄養に欠ける印象を受けた。

2. シラホシ亜属(高山系や与那国シラホシ)

こちらも消化能力が非常に強い。与那国シラホシの詳しい幼虫生息環境は公開されていないので伏せるが、どれも野外では木質が分解されたフレークをメインに摂食しており、樹種が針葉樹であっても問題なく摂食する。飼育下においても消化能力、速度共に強壮。

3.リュウキュウオオ亜属、ハイイロハナムグリ

消化能力が強いグループ。リュウキュウオオ亜属にはリュウキュウオオハナムグリとシロテンハナムグリが属する。前者は倒木や立ち枯れのフレークに、後者は主にリター層に生育し、分解が進んでいない落葉でも積極的に摂食している。ハイイロハナムグリは堆肥より産すると言われているが私はリター層からしか確認していない。飼育下においても食性は幅広いが、シロテンハナムグリに熟度の浅いクルビマットの類を使用した際に腹ボテ個体が多出したことからこの評価。 

4.イシガキシロテン亜属、訪花性小型種

消化能力が強いグループ

イシガキシロテン亜属は本土シロテンとは別亜属に属する。現地では落葉や砂混じりの土壌から産出する。訪花性小型種は幼虫の生息場所が詳しく判明していない種が多い。クロハナ、ホソコ等は詳しい生態が不明であるものの、新成虫が材木内より発見されることからこれらを摂食しているものと思われる。アオハナムグリは枝や倒木と樹皮の間のフレークから、ナミハナムグリやアオヒメハナムグリ、コアオハナムグリはリター層から産出する。飼育下においても分解力自体は弱くない。

5.リュウキュウツヤ亜属

消化能力が強いグループ。飼育下ではどのような飼料でも旺盛に摂食するが、奄美亜種と沖縄亜種を除き、野外においてはイシガキシロテンやシラホシ亜属ほど食性は広くなく、やや分解の進んだ土壌から産する。奄美亜種や沖縄亜種はどのような腐植土からも産出し大型になる。

6. オオシマアオ南方系亜属、カバイロハナ

消化能力が普通のグループ。野外においてはシロアリに分解されたフレークや土壌そのものを食している。基本的には腐葉土や通常の発酵マットでも生育するが、成長速度が遅くなる。具体的には新品腐葉土やアンテマット以上の熟度で飼育すると安定するほか、レンチン処理を施したマット等でも育ちが良くなる。

7.ナミカナブン、チャイロカナブン属

消化能力が若干弱いグループ

野外ではリター層に生息し、落葉や土壌を摂食している。ナミカナブンは通説として幼虫が産出する環境は屑群落の落葉であるが、他にも分解された土壌があれば竹林の林松や倒木下、ウロ等からも幅広く産出する。チャイロカナブンはイシガキシロテンと比較的似た環境から産出する。飼育下において、分解能力は強く概ね通常の発酵マットでも問題なく生育するものの、餌の栄養価が高いと死亡率が高まるほか、羽化時に腹ボテや不全を誘発する。また、累代を重ねると2令前後でヒネてしまう傾向にある。これらの種は新品の腐葉土前後の熟度や完熟マットによる飼育が賢明である。

8. オオシマアオ北方系亜属

消化能力が弱いグループ

キョウトアオハナムグリやクチノエラブ、トカラ、スワノセアオハナムグリなど。これらの種はリター層〜リター層直下に生育しており、砂混じりの土壌を食している。このことから、飼育下ではかなり分解の進んだ餌でないと健全に生育せず、特に蛹化前の死亡が多発する。飼育下では完熟マットや腐葉土の古くなったものをレンチンしたり、黒土や赤玉土を粉砕したものを混ぜて用いる。

9.アオカナブン属

消化能力が非常に弱いグループ

野外においては8.のグループより分解の進んだ箇所に生育するが、飼育下においては8.のグループより強い消化能力を持つ。野外ではリター層下や立ち枯れ根際のかなり乾燥した、ほとんど赤土や黒土に見える腐食土から産出する。アオカナブンは比較的食性が強いが、クロカナブンやサキシマアオカナブンはかなり分解の進んだ飼料を好む。ただ、8.のグループと異なり3令になってしまえばどのような餌でも概ね分解できてしまうのが本グループの特徴でもある。飼育下では8.に使う飼料を用いているが死亡率は他種に比べて高い。また、幼虫時に問題ないように見えても不全等を引き起こすことも少なくない。


以上、大まかではあるが国産ハナムグリ類の食性について記述した。ちなみに分解力の弱い種ほど虫体が柔らかくなり体毛が増える傾向にある。恐らく土中に潜りやすい進化を遂げたのだろう。以上のように分解の進んだ(熟度の高い)餌を好む種が多いことがわかる。


本記事の内容は以上だ。まとめとして以下の2フレーズを残す。


・腐葉土は必須ではないが用いても構わない

・熟度の高い餌を沢山与える飼育が最良





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