国ブン手稿

主にアマチュア採集家が国産ハナムグリ×クワガタの生態に迫るブログです

カテゴリ: 国産ハナムグリ紹介記事


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1.基本情報

和名:ホソコハナムグリ
学名:glycyphana(glycyphaniola)gracilis viridis
   Sawada,1942
分類:ハナムグリ族クロハナムグリ属
体長:10.8〜12.4mm
生息:神奈川以西(?)確実には近畿以西、四国、   九州、種子島、屋久島

2.形態

ホソコハナムグリの名の通り、細くて小さい以外にこれと言った特徴がない。極めて失礼だが日本最小のハナムグリ亜科という他以外に特徴がない。色味はアオヒメハナムグリをより鮮やかにした緑を基調に、上翅の肩口を中心に体の側面や前胸辺縁部、腹面の側部が白く縁取られる。頭部は黒色腹面は褐色で、腹部以外に金属光沢は見られない。絵の具の原色をそのまま厚塗りしたかのようなマットな質感だ。これら背面はあくまで被覆物の色彩であり、下地は薄い金属光沢を呈する。屋久島の個体群は上翅に白紋が出現する他、他地域においても幾つかの変異が見られる。
頭部上辺縁部は切れ込み側面中央部で出っ張る(変に言えば上部が切れ込んだキノコみたいな形)。上翅(胴体)は中脚のあたりでやや強めに湾入する。雌雄判別は後脚のフ節で行い、オスの方が若干長くなるものの判別は難しい。
幼虫は同属であるクロハナムグリとほとんど同じ形態で、朽木やフレークを食べる傾向にある種特有の長細い胴体が特徴的。成虫は盛んに擬死行動を取るが、朽木食の例に漏れず幼虫は極めて活発。

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3.生態

一般的に近畿以西(一応は神奈川以西?)に生息しているため、関東在住の筆者としては馴染みが薄い。ポイントは局所的だが、奈良県や京都府の一部においては少なくないらしい。5.6月と9月に多く観察されている他、飼育下においても6月にセットした個体が9月頃羽化し後食を行った。

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このことからコアオハナムグリ等と同様に、秋口に羽化した新成虫が後食後に越冬し産卵しているものと思われる。
同属のクロハナムグリと同様に、新成虫が朽木や立ち枯れから得られることは有名だ。幼虫も朽木から発見されているらしいが、私の身の回りでは確認事例を聞いたことがない。活動中の成虫が朽木に飛来する事例も確認されているが飛来自体が越冬場所を探すためなのか、産卵のためなのかは不明。

4.採集

本種は私が自ら採集をしていない種の一つであるため、情報量が少ない。(情報発信する際に自分で観察したか否かを明記するの大事ですよね)
聞き及ぶ所によると、所謂近鉄が重点的に走ってる辺りの平地や林縁で、シーズン中に花を掬う、オフシーズンに朽木を割り偶然に近い確率で採集するといった手法が選択肢として挙げられるのではないか。

5.%椅子

野外品の成虫は産卵、幼虫育成共に通常の市販マットで難なく行うことができる。産卵された幼虫は秋口には羽化し、程なく自力ハッチをして活動を開始する。その後給餌したものの産卵や越冬には至らずそのまま死亡した。
f1以降の産卵には後食後の越冬、日照時間変化等の体内時計を調整する材料が必要なものと思われる。

6.余談

関西以西を中心に分布する種はキョウトアオ、シラホシ、アオヒメハナムグリと言ったように少なくない。これらの種は照葉樹林に依存、とまでは行かずとも比較的重点的に生息していたり、単純に暖地性の種であったりする。ホソコハナムグリが関東で見られないことにも同様の要因が関係しているのではないか。しかし、分布域が広いながらもポイントが局所的であることには疑問が残る。
ポイントが局所的なハナムグリ亜科の代表種としてアカマダラハナムグリが挙げられる。アカマダラハナムグリは大型鳥類の巣材といった特殊な環境を発生源としていることから、本種も何か地域に依存する特殊な条件下の環境を利用しているのかもしれない。本種は成虫の観察事例に比べて幼虫の観察事例が少ない。無条件で適当な朽木を利用しているのであれば、観察事例も増えて然るべきだろう。例えばの話、本種の観察事例が多い奈良、京都、兵庫および以西の一部地域では、カシノナガキクイムシの被害が顕著だ。同様の被害は新潟や山形等日本海側でも確認されているが、上記の通り本種が暖地性であると仮定した場合、分布していない旨が説明できる。また、現在カシノナガキクイムシは東に分布を急速に拡大しつつあるが...



 

オオシマアオハナムグリ(nippnoprotaetia)の亜種紹介です。オオシマアオハナムグリの亜種は9種存在しますが、今回は原名亜種、徳之島亜種、沖永良部亜種、沖縄亜種、久米島亜種、伊平屋亜種を紹介します。南部亜種というタイトルですが学術的にそういった分類や単語が存在するわけではありません。単に私が記事分けの都合で勝手に呼称しているだけであり、他亜種との分類学上の相違等はありません。しかしながら今回紹介する亜種と、より北部に生息する3つの亜種間では、形態や生息環境に若干の違いがあるように思えます。といっても、今回紹介する種はどれも原名亜種に近い特徴を持っている為具体的な差異は北部系亜種の記事を参照してください。
基本的な採集方法、飼育方法は亜種間で差異がない為、原名亜種の記事を参照。

4.原名亜種

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詳細は原名亜種記事を参照→ http://japancetoniamanuscript.blog.jp/archives/24506372.html

和名:オオシマアオハナムグリ
学名:protaetia exasperata exasperata
体長:18.4〜21.9
分布:奄美諸島 


5.徳之島亜種
学名:protaetia exasperata nomurai
体長:18.8〜21.1mm
分布:徳之島 

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オス
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メス
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オス
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オス
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メス
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メス

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オス


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メス

形態:雌雄共に被覆物を欠き、黄緑色の強い金属光沢を持つ。個体差はあれど、鮮緑色〜柳色黄金色に近い体色を持ち、小盾板周りや上翅会合部、その他体の諸所にうっすらと桃色を帯びる。オスの前胸中心部や小盾板は点刻を欠き、中心部から辺縁部にかけて徐々に点刻が強く刻まれる。従ってただ点刻を欠いた種と比較してより複雑に強く光沢を放ち、非常に華美。一方メスは均一かつ細かく密に深く点刻が刻まれ、さながら「ラメ」のような質感。どちらもただピカピカ光る外産の下品な人気種とは勝負にならない玄妙さ、優美さを持つ。原名亜種や徳之島以南の他亜種対比若干大型化する。

その他:生態、採集、飼育方、全て他の亜種と変わらない。島内のシイ林を中心に生育し、成虫の発生時期は6〜8月頃と思われる。

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6.沖永良部島亜種

和名:オキノエラブアオハナムグリ学名:protaetia exasperata uenoi
体長:19.3〜22.2
分布:沖永良部 

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形態:外観上は徳之島亜種と然程変わらないが点刻が若干弱くなる。個体数を然程確認していない為断言できないが、体色に関しては徳之島亜種よりも赤みが強い緑銅色で、彩度では数歩歩劣る印象。

生態:他亜種対比、シイ林に然程依存せず島内の丘陵地に薄く広く生息し、リュウキュウマツ等からの倒木からも得られた。成虫の発生時期も徳之島亜種と然程変わらないようだ。

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7.沖縄亜種
学名:protaetia exasperata satoi
体長:19.0〜21.4
分布:沖縄本島、伊江島、渡嘉敷島
形態:(本土のキョウトアオ)奄美大島の原名亜種につぎ、オスが被覆物に覆われる亜種。外観は原名亜種に近いが、平均的により小型化すること、体型がより雫型に近づくこと、白紋がより鮮明に現れること、褐色を帯びた個体が多いこと等が特徴として挙げられ、完全な赤化型個体も少なくない。渡嘉敷列島ではかなりの確率で赤化型が得られるようだ。

生態:

8.伊平屋亜種

和名:イヘヤアオハナムグリ学名:protaetia exasperata iheyana
体長:17.9〜20.8
分布:伊平屋島、伊是名島 
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形態:外観を文書で書き表すことが無粋とも取れる程、特徴的な亜種。言うまでもなく最大の特徴は体色で、雌雄共に一般的な「褐色」(赤みのかかった茶色)とも異なり、錆色、鳶色、焦茶色といった、彩度を欠いたいぶし銀な体色を持ち、白紋は殆ど消失する。オスは被覆物に覆われメスは若干紫や緑を帯びる個体も存在する。
また、他亜種対比小型で、より雫に近いずんぐりむっくりとした体型だ。
余談であるが、一般的に同所に近縁種が生息するハナムグリは似た外観の種が生き残る(収斂)傾向にある。例えば前述した亜種が生息する島にはどこもリュウキュウツヤハナムグリ、イシガキシロテンハナムグリ、アオヒメハナムグリ等が生息し、どれも緑色を中心に体型も似通っており、素人目に見れば気付かない程度の差異しかない。宮古島であれば全ての種がピンク色に、与那国島であればどれも紫色を中心とした体色に収斂している。本亜種が生息する伊平屋島にもリュウキュウツヤ、イシガキシロテン、アオヒメ、リュウキュウオオ等の種が生息するが、体色はどれも緑色を基色したものだ。本亜種のみ例外的に収斂が起きていないことは非常に興味深い。
興味深いの一言で終わらせず仮説考察妄想の一つや二つでも述べたらどうだ、といった具合ですが、それはまた別の記事で...

生態:他亜種対比やや発生が遅く、期間も長い。7月中旬ごろから発生し、9月下旬頃まで見られるとのこと。ピークはおそらく8月中下旬

9.久米島亜種

和名:クメジマアオハナムグリ
学名:protaetia exasperata akitai
体長:18.5〜22.4
分布:久米島

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オス


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メス

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メスに見せかけてオス

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メス
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オス

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色彩変異(?)

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形態:他亜種対比やや小柄で白紋も弱い。体色は深緑色をベースに体の中心部にかけて赤褐色が強くなる。完全に赤褐色になる個体も存在しメスであれば伊平屋亜種に近づくほどの個体も存在する。雌雄の差異は少なく、ケイ節外棘や腹部、触角や上翅キールの他に、オスは前胸、腹部の白紋が発達する傾向にある。

生態:他亜種対比発生がやや遅く、7月上旬中旬が個体数のピーク。出鱈目な条例施行により、現在表だっての採集は不可。筆者は条例施行の前年本島に赴いたが、島民や自然保護団体気取りの連中が入れるであろう範疇の環境においては、開発による乾燥を中心に酷い有様であり、排他的な島民の性質やハブの個体密度を鑑みても、他の島に赴く方が楽しい時間を過ごせるように筆者は感じた。


本稿では奄美亜種以外の各亜種を紹介します。
リュウキュウツヤ各亜種は、亜種とは思えない程それぞれの特徴が際立っています

1.中之島亜種

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(画像個体は全て累代品を譲り受けたもの)

和名:トカラツヤハナムグリ
学名:protaetia pryeri tsutsuii Nakane1956
体長:18.7〜23.4
分布:口之島、中之島、平島

形態:全亜種中最も平均サイズが小さく、白紋が発達する。体型は原名亜種に近い雫型で、他亜種と比べて横幅が広い。色調はシラホシハナムグリと似通っているが、本種は点刻が細かく浅いため、全体的に非常に光沢が強くうつる。鏡面仕立ての下地にさざなみのような白紋が広がっており、これらの情報量が小柄な体躯に詰め込まれているかなりの美麗種だ。色彩変異らしい色彩変異はなく、個体差の範疇で緑みがかかる。稀に全身が緑銅色に変化する個体が観察されるらしい。

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雌雄判別方法は原種に同じでメスは前脚ケイ節に明瞭な外棘歯を3本備える。オスはこれが不明瞭。また、白紋の発達はメスの方が顕著になるらしい。

生態:やや平地に生息する傾向があり、標高を上げると同所的に生息するオオシマアオハナムグリばかりが得られる。奄美、原名亜種と比較して個体数は格段に少ない。成虫の活動時期も6月下旬〜7月上旬を中心にかなり限られている。時期さえ外さなければバナナトラップやタブ樹液等での観察自体は難しくない。幼虫の生態は不明だが、おそらく他種と違いはなさそうだ。ただ、生息域には木質の分解を専門とするハナムグリが生息しないため、そういった資源を優先的に利用している可能性もある活動時期が1.2か月程度と纏まっているため、発生サイクルも単純な1年1化と思われる。

3.悪石島亜種

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(画像個体は全て累代品)
和名:アクセキツヤハナムグリ
学名:protaetia pryeri akusekiana Nomura1964
体長:21.0〜22.5mm
分布:悪石島

形態:やや大型になり、鈍い金属光沢を持つ。
前胸、上翅上部の点刻はまばら、上翅下部中央の点刻は密になる。体躯はやや細長く、白紋が消失するなどやや奄美亜種に似る。
最大の特徴はなんと言ってもその体色だ。原名の鮮やかな緑とも異なり、奄美亜種の黒化型とも異なる、暗緑銅色〜黒銅色に、若干青いホログラムが乗る。

色彩変異個体

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ちなみに腹面はくすんだオリーブ色。

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「渋い」を地で行く、魅力的な種だ。

生態:中之島亜種と同じくやや平地に生息し、バナナトラップや各種樹液等で得られる。そもそも生息地の悪石島自体が切り立った崖の上にあり、標高を上げると竹林ばかりになるため生息地が限られている。加えて本島にのみ生息しており絶滅が危ぶまれる。個体数も多くない。
飼育下ですら1年程度の幼虫期間と半年程度の休眠期間を要する個体がいるため、奄美亜種などと同じく単純な1年1化を送る個体群と、8月以降に羽化し翌年まで休眠する個体群に分かれるものと思われる。

4.宝島亜種(画像は不確定)

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和名:エサキツヤハナムグリ
学名:protaetia pryeri esakii Nakane1956
体長:19.2〜25.8mm
分布:佐多岬、枇榔島、馬毛島、硫黄島、竹島   宝島、横当島、臥蛇島?鹿児島県南部?

形態:全体的にやや小型。分布が特殊で、トカラ列島を挟んで宝島と小宝島に生息する系統と九州南部離島や鹿児島県内に生息する系統に別れる。前者の外観は概ね小型の奄美亜種といった様相で黄緑銅色〜赤銅色の変異が見られる。一方九州南部の個体群は原名亜種のように体躯はやや幅広になり、体色も濃緑銅色になる。

鹿児島市内にはリュウキュウツヤハナムグリが移入している。それらが本亜種であるのか、奄美亜種であるのかは不明。両者の判別方法はオスの交尾器により行う。上載画像の個体は鹿児島市内産だ。交尾器は奄美亜種のものと比べ幅広になっており、本亜種のものである可能性がある。しかしながら交尾器自体にも個体差があるため確実な断定はできない。

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また上翅全体に赤みがかかっており、こちらも宝島亜種の、特に宝島由来であることを匂わせる特徴だ。(奄美亜種は基本的に上翅の側面が赤くなる傾向にある) 鹿児島市は佐多岬とは地続きになっている他、トカラ列島奄美大島九州南部離島、全てのフェリーターミナルが存在するため、どの亜種が移入してもおかしくない。こればかりは多くの個体を観察する以外に判断する方法はない。

生態:宝島や他離島における個体数は少なくないらしいが、佐多岬における個体数は多くないとの情報もある。夏場は上空を飛び回っているらしいが、生息地周辺はトラップの設置ができない。特保、並びに一種保護区外においても幼虫の採集は可能だ。下載画像は本種の亡骸と本種と思わしき幼虫。

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余談だが、トカラ列島では諏訪瀬島にのみリュウキュウツヤハナムグリが生息していない。

5.宮古亜種

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和名:ミヤコツヤハナムグリ
学名:protaetia pryeri nitidicosta Yawata1941
体長:19.4〜25.6mm
分布:宮古島、多良間島、伊良部島、水納島

形態:本亜種は上翅の幅が狭くなるが、前胸部も細くなっているため、雫のようなシルエットであることに変わりはない。赤銅色、稀に緑銅色の下地にトカラ亜種並みの白紋を備える非常に美しい亜種。同所的に生息するイシガキシロテンやミヤコオオと非常に似通った色形をしており、収斂の様子がまた取れる。
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手前からツヤハナ、オオハナ、ガキテン
多良間島、未納島の個体群は緑銅色の出現率が高く、小型化する傾向にあり、こちらも体色等同所に生息するイシガキシロテンと類似した形態となっている。

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多良間島産
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生態:同所的に生息するイシガキシロテンが林縁や草原、農道脇の植え込み等に生息する反面本種の幼虫は林内の土壌をメインに薄く広く生息する。成虫の活動時期は5〜7月に限定されており、必要に応じ休眠期間を調整しているものと思われる。

多良間島にて幼虫。右側が本種。
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1.基本情報

和名:ミヤコオオハナムグリ
学名:protaetia(liocora)miyakoensis 
          Niijima Kinoshita 1923
分類:シロテン属シラホシ亜属
体長:20.5〜27.3mm
生息:宮古島、伊良部島 沖縄本島(移入?)

2.形態

シラホシ亜属の中で最も大型になる種で、体色はくすんだ緑銅色。画像で見ると何処にでもいる地味でありきたりなハナムグリに見えるが、宮古諸島の固有種(亜種ではない)だけあって実際に肉眼で見るとかなり異質な種。
稀に赤銅色や黒銅色の変異を呈する。
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色彩変異個体
上翅や腹部には白紋が入り、特に上翅の白紋は細かくまばらで帯状になることはあまりない。
胸部辺縁部は申し訳程度に白く縁取られる。
オスの方が光沢や上翅キールが発達するといった特徴は、他シラホシ亜属と共通している。
点刻は体全体の側面や上翅中央部に密である一方で、前胸背板中央部の点刻は極めて浅く艶やかに見える。後脚の段刻は2つで、頭部辺縁は極めて浅く湾入し、翅端部は突出する。同所的に生息するイシガキシロテンハナムグリは頭部辺縁が深く湾入し、リュウキュウツヤハナムグリは翅端部が突出しないことから判別が可能。そもそも体型が全く違うので判別は容易。本種は上翅、前胸共に縦に長く、加えて側面から見た際の体高が薄いため「ぬりかべ」のような印象を受けるが、他2種は体高が厚く圧倒的にコロコロしている。

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側面

雌雄判別は前脚ケイ節、腹部、尾節板等で行う

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オス前脚ケイ節

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メス前脚ケイ節

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オス腹部。縦溝が見て取れる。

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メス腹部。縦溝はなく尾節板も出っ張る。

幼虫は典型的なシラホシ亜属の風貌
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3.生態

成虫は5〜9月に活動し、各種花や腐果実等に集まると思われるが、筆者自身が観察したわけではなく、加えて情報もない為詳しい事は不明。後述するように、幼虫自体は極めてありきたりなシラホシハナムグリと殆ど同様の生態をしており、成虫も同様の生態であることが予想される。肝心の幼虫はシラホシハナムグリ亜属の例に漏れず、木質を中心とした各種腐植質に生育する。その食性は広く、立ち枯れや朽木内フレーク、ヒラタクワガタの食跡、樹洞など。
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極端な例だと、幹の表面のみシロアリに食害された立ち枯れの、地面にフレークが積もった箇所からも産出した。
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上述の通り、私が観察した際はどのような環境からも満遍なく、かつ多数の個体が得られたが知人研究者や採集者は口を揃えて個体数が少ないと言う。食性を鑑みるに、森林性の高い箇所では多数得られるものの、一度ポイントを外せば探し難いといった種なのではないか。

飼育下では基本的に1年1化で春先に羽化した。成虫の休眠期間も1ヶ月ほどで、成虫越冬はしない。野外でも同様のサイクルを送っていると思われる。

4.飼育

産卵、幼虫飼育共に難しいことはない。
成虫は羽化後2.3週間程で後食を開始し、産卵に至る。繭玉を割っても特に支障はない。産卵はどのようなマット、湿度でも行われ、幼虫の食性も広い。発酵の浅いマットでも問題なく食し成長する。幼虫期間は半年程。


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1.基本情報

和名:タイワン(ヨナグニ)シラホシハナムグリ
学名:protaetia formosana nozatoi Miyake1986
系統:シロテン属シラホシ亜属
体長:18.5mm〜24.7mm
分布:与那国島

2.形態

体色は赤、紫銅色を中心に稀に黒銅色。
体躯は全体的に角ばっており、翅端部の強い突出と上翅中央下部の凹圧が特徴。シラホシハナムグリとムラサキツヤハナムグリをミックスして小さくしたような種だ。頭部前縁は凹圧しない。明瞭な白紋を有するが、白紋自体のパターンは概ね決まっており帯状になることはない。

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同所的にイシガキシロテンハナムグリ与那国島亜種が生息する。色彩、サイズ共に本種と極めて近しい外見をしているが、以下の点で判別が可能。

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左が本種 右がガキテン


1.頭部
シラホシは凹圧しない。シロテンは中央部で湾入する。
2.翅端部
シラホシは強く突出する。シロテンの突出は極めて弱い
3.後脚段刻
シラホシは1つ、シロテンは2つ
4.白紋 
当ブログでは白紋による判別を推奨していないが、あくまで傾向としてシラホシの前胸部白紋はまさに「点」であり、目立たない。シロテンの前胸部白紋は強く発達することがある。上翅部の白紋も同様。(下載画像のヨナグニシロテンは前胸部白紋の発達が弱いです、申し訳ナス)
5.点刻
シラホシは辺縁部に小さく密に上翅凹圧部に大きく強く刻まれる。小楯板周りの点刻は目立たない。シロテンは全体的に大きく雑に刻まれている。端的に言えば星は点と比べてかなり滑らか。

以上の点などで区別可能であるが、実際に見れば雰囲気が全く違うため判別は容易。

タイワンシラホシ
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ヨナグニシロテンハナムグリ
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タイワンシラホシ
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ヨナグニシラホシ
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雌雄判別は腹部又は前脚ケイ節。
オスの腹部は縦溝状に凹圧される。

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本種は台湾に生息するタイワンシラホシハナムグリの与那国島の亜種だ。原名亜種は本亜種と比べ白紋が発達せずサイズも若干大きい。
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台湾にて

ちなみに、ひょんなことから中国産のformosanaと思われる個体を入手したことがある。非常に強い光沢と赤みで、かなり美麗だった。是非とも累代したかったものの、オス単であった為泣く泣く〆た。
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3.生態

一年一化で成虫は6月〜7月下旬にかけて発生、8月上旬ごろまで活動する。カラスザンショウ等の樹液やアダン、イヌビワなどの熟果を利用する。イシガキ(ヨナグニ)シロテンのように花資源を利用するかは不明。本土のシロテン、シラホシのように餌ニッチを棲み分けている可能性もある。イシガキ(ヨナグニ)シロテンと比べてやや森林部、山地に生息するようだ。成虫の個体数が非常に多いにもかかわらず幼虫の発見例は非常に少ない。ちなみに、同亜属のシラホシハナムグリも成虫の個体数と幼虫の観察難易度が釣り合っていない。シラホシ亜属の種は殆どが木質由来を中心として、幅広い餌資源を利用している。本種においても、先達の発見例は朽木中から得られたというものだ。私自身も部分枯れの内部より本種の物と思われる糞を大量に確認したり樹洞から本種幼虫を採集している。

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観察例が少ないため断言はできないが、上記の事項から判断するに、恐らく木質由来の腐植物を中心に利用している物と思われる。幼虫期間は半年程だが、成虫での寿命も長いため、現地では適宜蛹室内での越冬期間を設け1年1化で活動しているものと思われる。

4.採集

シーズン中の採集は未経験なので又聞きの情報になってしまうが、シーズン中の果実トラップや樹液ルッキングで極めて容易に採集できるようだ。また、現地ではヒラタクワガタ類やセミ類が吸汁のために樹木の枝を傷つけ、滲み出た樹液を吸うためにコメツキムシや本種が集まりさらに傷口を広げるらしい。幼虫の採集は推奨できないが、上記のような樹洞、朽木等を探すのが吉と思われる。また、山によって個体数が異なるようで、生息地の付近は他ポイントと比べてシュロが非常に多いという特徴があった。台湾などで、ヤシ類はハナムグリ類の重要なホストの一つとなっている。このことから、本種もシュロの樹上枯れや、シュロ腐植物が堆積した土壌の深い箇所、人工的に伐採された葉が集められている場所等を積極的に利用している可能性もある。
(何故ここまで予測しているのに幼虫を大量に採集できなかったのかという問題について、原因はひとえに私が与那国を舐めきっていたからです。)

5.飼育

余談であるが、筆者が初めて飼育した国産離島ハナムグリでもある。産卵、幼虫飼育共に廃マットや腐葉土で極めて容易。共食いもせず、低緯度であることが功を奏しているためか、日照時間や体内時計など、成熟を成す要素に気をつかうこともない。

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