国ブン手稿

主にアマチュア採集家が国産ハナムグリ×クワガタの生態に迫るブログです

カテゴリ: 国産クワガタ

3回に渡る最後の記事は対馬よりお送りしております。ちなみに、対馬ヤマネコでは無いタダノイエネコは、島内に広く分布しています。

ケツがよFullSizeRender

これまでお送りしてきた記事のメインターゲットであるハチジョウヒラタやダイトウヒラタはどちらも島の名前を冠するヒラタです。となれば、今回のターゲットはツシマヒラタ、と言いたい所ですが、現実はそう甘くはありません。

ツシマヒラタを幾百匹捕まえようが出会えるか怪しい、そんな今回のお相手は国内に生息するヒラタ3種の一角こと、チョウセンヒラタの材割です。チョウセンヒラタ自体は樹液やトラップ等でそこそこ得られるようで、推測にはなりますが難易度的に言えばハチジョウヒラタのa型より若干難しい程度(苦労するが採れない程では無い)といった程度でしょう。しかし材割となると話が変わってきます。現地民によりちらほら材割で発見されるケースもあるそうですが、具体的な生態が一切判明しておらず、マユツバもの。加えて材には殆どツシマヒラタが入っており、選択的に本種を採集するのは至難の業。両種は亜種同士の関係ではなく全くの別種ですが、幼虫成虫共に外観が酷似しておりこの辺りも採集を面倒にしている要因の一つです。

参考 チョウセンヒラタ飼育個体FullSizeRender

両者の主たる差異は以下の通りです。

外観:雌雄共に、ヒラタの後脚には明確な外棘がある一方で、チョウセンはこれを欠く。雌雄共に、チョウセンの体幅、特に前胸背板の幅がヒラタ対比狭くなり、上翅は強い光沢を帯び、前ケイ節が強く湾曲する他チョウセンヒラタのメスは目上突起が完全に複眼を覆う、オスの大顎は丸みを帯びるといった差異があります。幼虫の判別はより困難で、チョウセンの体躯は若干細長くなり、頭部はツシマより丸みを帯びる傾向がある気がしますが、個体差の範疇に収まってしまうものです。が、チョウセンはツシマ対比かなり小型になる為、ツシマであればあり得ない程小型の幼虫であれば、必然的にチョウセンの可能性が高くなります。

生態:生態に関しては判明してる事項が殆どありません。ツシマヒラタが島内全体にコクワガタ以上の密度で多数生息していることに対し、チョウセンは主に沿岸部の疎林に少数生息しているのみ。成虫は主に歩行を移動手段としており、採集時も地面近くに仕掛けた果実トラップにかかることが多いとか。幼虫の生態は殆ど情報がなく、メスの前ケイ節から鑑みるに根食であるということのみ。ツシマヒラタやノコギリとどのように棲み分けているのか、全くの謎です。

くどいようですが、チョウセンヒラタはツシマヒラタとは亜種同士の関係ではなく、全くの別種です。そのため幼虫含めた生態等に違いがあって然るべきだと私は考えます。偶然幼虫が採れてしまった、を超え、明確な幼虫生態に迫る。これが今回のミッションです。


2.日程の組み方

私の持論に、冗長に粘って採れねば諦めろといったものがあります。勿論採集マンたるものいつ何時如何なる状況下でも諦めず粘り続けることが理想です。が、最後まで諦めず全力を尽くす事と、ダラダラ間延びした採集を続ける事は別物です。気力、体力共にフルコンディションを発揮できるリミットを考慮し、採集時間を絞る必要があります。特に離島の場合は天候の兼ね合いもあるため、雨雲レーダーと睨めっこをし、自分が出張るタイミングを見極めるのも重要です。私の場合一度休んでしまうと中々復帰できない一方で、寝ずに動き続けられる時間が短く、30時間に満たないほどです。ですが、30時間もあれば思い付く限りの手法を、複数ポイントで試す事が出来ます。更に、この自分最高のゴールデンタイムを遠征終盤に持ってくる事で、リミットが迫る適度な緊迫感と、これが終わったら後は帰るだけといった捨て身、火事場の状況を作り出す事ができます。今回の対馬遠征はgwを丸ごと使いました。4日早朝に現地入りし、7日の昼過ぎに切り上げる。折角対馬まで来たので最初の2日間は他の特産種を狙いつつ体を慣らし、終盤にチョウセンを持ってくる作戦です。そんなウォーミングアップに選ばれた名誉昆虫は以下の3種類。

3.オオクワガタを追え!

世の中には二種類のクワガタ採集屋がいると言われています。マルバネに行き着く者とオオクワに行き着く者(と、どちらにも属さない私達!)です。オオクワ屋が唯一遠征すると言っても差し支えない離島、それが対馬であり、裏を返せば対馬は実質唯一のオオクワが採れる離島とも言えます。実際は奥尻島や四国島があるじゃないか!といった意見もあるでしょうが、とにかく対馬産オオクワは、オオクワ屋であれば一度は採集したいレア産地!と言えるのではないでしょうか。オオクワに全く疎い私がこれ以上オオクワの事を語ると、防犯ブザー携行を伴わない夜間の外出が難しくなるので、前置きはこの辺にしておきます。

さて、そんな対馬のオオクワですが、採集の難易度はそこそこ難しいとされています。何故なら、台場クヌギやブナの巨木が乱立する森に住まう本土産オオクワが好む環境と、対馬産オオクワが好む環境が大きく異なるからです。この1フレーズを知っているだけで、難易度は数段落ちるでしょう。こんな夜中なのにインターホンが鳴っているので少し玄関を見てきます。

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冗談はさておき、オオクワガタに関する情報は他種対比センシティブでどこから恨みを買うかわからないので、これ以上詳しく書けません。月刊むしの古い記事などに詳細ポイントが載っているので、そちらを参考に、若しくは私に直接dmしてください(泣)話を採集に戻します。本土産オオクワと対馬産オオクワ、最大の違いは好む樹種にあります。一方で樹種が違うと言えども、オオクワが飛来しやすく、白色腐朽菌にとって有利な、風通しが良く開けている環境を探す事に変わりはありません。ガレ場沿いや尾根沿いにある落下材や倒木を割ながら歩いてるうち、日が登り切る前に発生木を2本当てる事ができました。
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3.大陸系イケメンでマヂ狂い

オオクワの産地しかり、対馬の森はどこも非常に歩きやすいように感じます。下草や灌木が少なく、斜面が緩いせいでしょうか。本土マムシよりも気性の荒い対馬マムシが生息していますが、現地爺曰く、最近はイノシシやイタチの捕食により個体数を減らしているそうです。要するに、山肌であっても沢沿いであっても、地面を気にせず斜面を駆け登り、転がるように降る事ができます。標高を上げるも下げるもさしたる労力を使いません。沢沿い×標高、勘の良い方はお気付きかと思いますが、対馬にはキンオニクワガタという、外しては通ることのできない超絶イケメンな固有種が生息しています。
参考 飼育個体
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鈍色に輝く全身は角度によりビスマス鉱のような彩光を放つのみならず

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スラッと前に伸びつつも天を衝くかのように反り上がった大顎を持ちます。国産種屈指のビジュアルを誇る本種ですが、採集自体は至って簡単です。オニクワの名を冠している以上、ある程度の標高は必要ですが、本土のオニクワガタが標高700m前後、屋久島のオニクワガタが標高500m前後から個体数が多くなる一方で、本種は200mもあれば十分個体数が確認できます。

本種の生息する沢FullSizeRender

材の湿度や枯れ方にも寛容で、通常のオニクワがしっかり黒枯れ×水没寸前の多湿材を好む一方、本種は接地材かつ表面が手で崩せる程度に朽ちていれば、中が白枯れでも問題なく生育できるようです。IMG_7646
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ちなみに同所的に頭部の色形が良く似たコクワガタが出土しますが、コクワの気門は明確なc型を呈している一方、本種の気門はほぼi型に潰れているため、判別は容易です。

他にも赤枯れを叩いているとネブトなんかも見る事ができました。IMG_7651

これらのクワガタ類が生息する山にはアカアシクワガタも生息しているようですが、オオクワガタの数倍採集が難しいのではないでしょうか。ちなみに、キンオニ自体湿度の高い環境にいること、表皮が薄いこと故か、メタリジウム菌の感染率はかなりのもので、採集個体の4分の1程が表皮に黒点を有していました。採集後の表面洗浄、複数ルアケ持参、既製品マットを詰めてくるといった対策は必須です。

初日の午前はこれにて終了。

4.ど地味な激レア種でガンギマリ

午後はこれまた国内では対馬にのみ生息する固有種、シナハナムグリの捕獲を試みました。この種自体、近年では流通も少なくありませんが生息地が局所的であるが故に、一昔前まではレア種の扱いを受けていたとか。現在でも幼虫は未発見でしたが、旅程中殆ど雨天に見舞われていたため、幼虫堀りを敢行せざるを得ませんでした。今回は成虫の採集経験がある方にポイントをご教示頂いていたため、早速ポイントに向かいました。が、到着するなり辺りを見回し、呆然。海風がビュンビュン吹き付ける急斜面で土壌も特徴的な礫岩からなっておりとてもハナムグリに優しい環境には思えませんでした。ちなみに、サムネイルに使用している画像は特徴的な対馬礫岩の画像です。当該ポイント周辺の土壌はこのような礫岩が風により削られて出来た砂利の上に僅かに腐植物が堆積しています。
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確かに地面をローラーすると、ハナムグリの糞自体は出てきますが、幅広(ナミカナブン?)であったり大型であったり(シロテンハナムグリ?)、中々本種の物と思わしき糞が出てきません。本種の活動時期が5月なのも相まって、幼虫は勿論のこと、せめて繭玉や繭玉の破片だけでもと思えど、なしの礫でした(礫岩だけに)。そうこうしているうちに、雨雲レーダーが赤になるほどの豪雨と雷に襲われ退却を余儀なくする事に。初日の採集を諦める事となりました。

二日目は明け方から採集を開始。結論、斜面に生える木に引っかかる腐植土を中心に捜索した結果、それらしき幼虫を幾つか発見。FullSizeRender

午後には30分ほど晴れ間が差し、飛来した成虫の捕獲にも成功。
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クワガタの採集記事であるため、シナハナムグリについての詳細は割愛させていただきます。詳細はシナハナムグリの記事で詳しく採り上げておりますのでご興味のある方はご覧下さい。
結局2日目の夕方頃までシナハナムグリの捕獲に時間を費やしましたがここまでは想定内。良い感じにエンジンが掛かってきた所で、次回はいよいよ後半戦。ヒラタ採集三部作の最終回ことチョウセンヒラタの幼虫採集に挑みます。

継続的に当ブログを訪れて下さる方は既にご周知のことかと思いますが、私の好む採集スタイルは「材割」です。余計な小細工は用いず、ブロックハンマー、はたまた斧一本で対象昆虫の生態に迫るこの手法を私は愛して止みません。しかしながらこの採集方法は、一般的な採集者≒成虫の野外品標本を作成することが目標である人達の間では、マイナーなやり方となっています。私の場合、採集の先にある目標がブリードや幼虫生態≒その虫の本質に迫ることなので、このスタイルがマッチしていますが、少数派であることに変わりはありません。今回のターゲットは、そんな「材割」がメインの採集方法になる種類です。

1.八丈からの入植 うふあがりを知る

今回の舞台は通称うふあがり島こと北大東島です。前回の八丈島から1ヶ月足らず、この島に赴いた理由はこの島の歴史と関わりがあります。

北大東島が属する大東諸島は南大東島、沖大東島、その他小島から成り、有人島は南北大東島のみです。どちらも四方4キロにも満たない小島ながら、人口は北大東が600人強、南大東が1400人強となっています。大東諸島から一番近い有人島は沖縄本島ですが、それでも尚沖縄から見て400キロ程南東にあります。文字通り絶海の孤島で、小笠原同様「果て」を感じます。

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このような地理的特性上、上陸は20世紀に入ってからの事であり、比較的歴史が浅い島であることがわかります。余談ですが、先島諸島や大東諸島のように、土着の歴史が浅い島は島民の起床も穏やかである一方、奄○や沖○本島といったような島はウチナーに厳しいといった噂がまことしやかに囁かれていたりいなかったり...

一番近い有人島が沖縄本島ということで、当然入植も沖縄本島から行われたと考えることが適当でしょう。が、事実は小説より奇なり、なんとこの島に最初に入植した人々は「八丈島」より、遥々海を越え辿り着いたといいます。航海技術も未発達な時代に、まだ見ぬ土地を求め1100キロ以上の大洋を荒波にも負けず、超え進むフロンティアスピリッツにあやかり、八丈→大東という行程をトレースしました。

が、実際の所は資本主義に物を言わせ、那覇空港よりプロペラ機で30分と短い冒険の旅に留まりました。現代の旅路に困難なんてありませんガハハ。

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ちなみに、八丈島からの入植ということで、グルメも島寿司など八丈の影響を色濃く受けています。こちらの島寿司には唐辛子は使われておらず、甘辛い所謂一般的なヅケ寿司で、ネタはマグロやサワラが主流だとか。他にも方言も八丈のものに近いようですが、方言の濃い人と出会わなかったため検証出来ずしまいでした。折角なので島の事情にもう少し踏み込んでおきます。北大東は戦前リンの採掘業で栄えた島であり海岸に当時の遺構が残されています。イメージはさながらモンスターハンターシリーズに登場する孤島ステージ。

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現在は製糖業が栄えており、島のほとんどはサトウキビ畑。人口は600人強ながら沖縄県内の市町村別平均所得がトップとなっています。IMG_6481

2.北大東のヒラタクワガタ

今回のターゲットはヒラタクワガタ大東亜種、一度当ブログでも過去に取り上げた事がある思い出深い種です。

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高校時代の香ばしい記事を記念として残してあります。どうぞご査収ください。

寸詰りで脚部が全体的に短く、小柄。そして何より小豆色の体色が目を引く最も特異な風貌を持つ亜種ですが、国産離島ヒラタの中で最も早期に進化を遂げたとも言われています。南北大東島はおよそ13キロしか離れておらず、両島に生息する個体間に際立った違いはないと言われています。北大東島の個体群は南大東対比色艶が鮮やかになるとの情報もありますが、真偽の程は定かではありません。

脚部が未発達であるといった特徴は、歩行を主体とする生活もしくは移動を必要としない生活を長年続け、退化した証左とも言えます。事実本種が果実トラップや樹液などに集まっている様子は確認されておらず、(ライトトラップに飛来した事例があるらしい)発見される成虫は発生木の周りを歩行する個体や内部のフレークに留まっている個体がほとんど。つまり、本種の採集方法は発生源となる倒木を直接叩く方法が主となります。

前回紹介したハチジョウヒラタや本土ヒラタは基本的に地中部の材を利用しますが、本種を含めた南西諸島のヒラタは地上部だろうが地下部だろうがお構いなしに利用します。そのため、結論本種を採集するのみであれば、難易度は高くありません。事実、南大東島については、毎年多くのクワガタ屋が赴き、坊主をかます人間はいない程度の難易度です。問題は今回の舞台となる北大東島の環境で、南大東対比殆どマトモな森林がない上に島中が極端に乾燥しており発生源となり得る物件が非常に少ないといった事情を抱えています。従って採集も困難、鬼畜難易度を誇るとされ、多くの媒体で取り上げられています。当然北大東産のダイトウヒラタにはプレミアが付いていますが、飼育下ではバカスカ増える虫なので、わざわざ採りに行く人がいないといった所が実情でしょう(行けば採れる)。と、出向く直前まで考えていました。


3.いざ島へ

この島においても生息するハナムグリは移入種のサカイシロテンのみであり、狙いはダイトウヒラタクワガタとダイトウマメクワガタ2種に絞られます。従って日程も半日程で済むとタカを括り、週末弾丸採集を計画しました。仕事終わり成田に直行し、翌朝早朝の便で那覇へ。那覇より北大東行きの直行便に乗り込みます。IMG_6396


島には土曜の昼過ぎに到着。夕日に照らされる廃墟を眺め、のんびり始めました。FullSizeRender

大東諸島は珊瑚礁が隆起して出来た島で、当然地面も雨水により削られ尖った石灰岩から成っています。歩きにくい事この上ないことは元より、土壌が水を湛えないために島全体が乾燥しています。もう一歩島の地理に細かく迫りましょう。島の外周部は迫り上がっており、そのような箇所は「幕(ハグ)」と呼称されています。この幕部分がモクマオウやギンネムから成る防風林(長幕)となっており、島の中心部を囲っています。ちなみに、激しい海風から守られている盆地状の島中央部には集落があり、これらの地域は「幕下」と呼称されています。この「幕下」にはガジュマルやシマグワ、ダイトウセイシボクのような一般的な沖縄の森が点在しているため、初めはこれらの森を探索することにしました。

石灰岩が雨水により削られ出来た地形は存外かなりの高低差があり、本当に四方4キロに満たない島が見せる景色なのかと、目を疑いたくなる程複雑怪奇なものになっていました。
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写真が下手すぎて上手く伝わりませんが、落差10メートルほどの谷があったり。

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島中続いているのではないかと思う程複雑に入り組んでいる洞窟があったり
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中々のダンジョン感を楽しめました。決して遊びに来た訳ではありません。狙い通り、このような地形には湿度が保たれた材が転がっていました。これで勝ったも同然と思ったのも束の間そこそこの本数を叩いたものの、手がかりすら掴めず。「この俺がヒラタ如きに苦戦を...?」といった感想を抱いているうち、豪雨と雷に見舞われ一時退却することに。

知人とラインをしている際に「あまり高低差がある複雑な環境は、飛べない(飛ばない)ダイトウヒラタにとってアクセスが悪すぎるのではないか」との意見を頂戴し、作戦を切り替えることにしました。

4.ヒラタに苦戦

次に入ったのは防風林。日付が変わった頃より1.2時間ほど探索しましたが、今度の土壌は殆ど岩が露出している状態であり、枯れ木も干物にと化したカチカチになっているものか、カサカサに赤枯れたリュウキュウマツのフレークだけでした。腹いせにリュウキュウマツを叩くも、流石にクワガタは出ず。その後、集落周りや溜池周り島を回るも、とにかくマトモな材がなく「絶対いないだろこの材」といった材を割った同業者の痕跡が散見されるのみでした。

そして朝になります。雨も上がりリミットも近づいてくる中、最後に選んだポイントは
・等高線がキツい箇所の真下にある≒歩いてきたヒラタが転がり落ちてくるであろう
・等高線のユルい箇所(落差の反省を活かして)

でした。森の入り口は初日の環境に似て石灰岩が剥き出しになっており、生えてる植物もオオタニワタリを中心にクワガタが入らないものでした。

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歩みを進めるうちに、やや土壌の質、材の湿度がマトモになってきます。
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然し乍らここで第二の問題が発生。

どの材を割っても、夥しい数のアリが出てくる出てくる。おそらく、土壌が石灰岩であるが故に地面に巣を作り辛いのでしょうか、どの材も例外なくアリの巣となっていました。昨日から朽木中にフレークが溜まっている事が多々あり劣化したヒラタの食痕を期待していましたが、答えはよりシンプルで、アリが巣を作る過程で削り出した木粉であることがわかりました。おや、これは某山猫島での採集に役立ちそうな情報ですね。

最終的に辿り着いたのは、ある程度開け、乾燥した太めのモクマオウが乱立している箇所でした。が、やはりどの材を割ってもアリの巣ばかり。
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湿度とアリを除けば、今までで一番土壌に腐植物が積もっており、材の本数も申し分なかったため、八丈遠征により揺らいだ従来の「ヒラタ=多湿材」と言った固定観念を捨て、捜索を続けます。すると、アリに侵食されている材ながら、フレークの中から見慣れた幼虫が出現。

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午前7時頃、ようやく最初の幼虫を手にすることができました。1匹捕まえて仕舞えば後は簡単です。付近の材から多数幼虫を得ることができました。
白い小さな幼虫は蟻の幼虫です。キモすぎわろた。
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材の状態があまりにも劣悪で、ヒネる一歩手前の幼虫も多数。
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アリに噛まれて身を縮める幼虫
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かなり乾燥しているものの標準的な白枯れからは10数頭の幼虫が得られました。
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そんなこんなで発生木を6本ほど当て終了。どの材を割っている際にも、材中から無限に湧き出るアリは勿論、気付けば材から離れている土壌にすらアリの大群が。さながらアリの絨毯です。荷物に、ハンマーに、手袋の中に、蟻、蟻、蟻。加えて、この島にはタイワンキドクガという毒を持つ蛾、毛虫の類がかなりの密度で生息しています。果たして特定の食草があるのか疑問に思うほど、どの木にも姿を見せるため、藪漕ぎをしていて本種との接触を避けることは実質不可能です。IMG_6673

気持ち悪さがピークに達した為、耐えきれず海へと向かい、汗を流します。
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遮る物は皆無、ただ究極に太平洋
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大東では神社にお詣りすると採れるとのジンクスがあります
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その後は地元の食堂で島寿司をば。
全体的に甘めな味付けとなっており私好みでした。また、画面外にてジャガイモを麺に使用したソーキそばを頂きました。北大東の新しい名物にする動きがあるそうですが、しっかりとした歯応えがかなり美味で、島を代表するに相応しい逸品でした。
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5.マメクワガタとサイカブトについて

その後は余った時間でダイトウマメとサイカブトを回収することに。
固有種ことダイトウマメクワガタは、太めかつ新しめの白色腐朽材に入っています。本土対比大型で艶が強く、湿度の高い材を好むそうですが、海岸沿いのガサガサ剤から出るなど、生息環境に関してはさしたる違いがあるように感じませんでした。南大東に行く人々の間では無限に出てくるかのような話を聞きますが、北大東においてはしっかり捜さないと採れない印象です。分布は広く島中で確認しましたがこの時期はどうやら前蛹〜蛹が主流であるようでした。IMG_6645

サイカブトに関しては、下記画像のようなフェロモントラップが島中のサトウキビ畑の横に仕掛けられており、3月にもかかわらず多数の個体が確認できました。
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私はあまりカブトムシに興味がありません。それでも普段見ない熱帯性大型甲虫を手に取るという行為は、中々に興奮する出来事でした。
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サイカブトに言及する以上はヒサマツサイカブトにも言及するべきでしょう。ヒサマツサイカブトは南大東島のみで確認されているサイカブトで、通常のサイカブト対比圧倒的な横幅を持ち、胸角も大きく発達するそうです。是非一度お目にかかりたいものですが、確認されている個体数は2桁に満たず、偶産かはたまた絶滅種か、なんにせよUMAのような扱いを受けています。
現在では種の保存法で採集が規制されていますが、生息環境を確認すること自体は禁止されていません。先人や現地民が調査を重ねているにも関わらず発見されていない以上、本気で探したとて出会える確率は非常に低いでしょう。しかし、前提として本格的な調査が行われてきたのか、疑問が残ります。数年前まで幻と言われていたヤエヤマコクワは調査を重ねた結果、現在では多数の成虫が得られていますし、長年採集されてこなかった幼虫も私の手によって採集されました(隙自語)。どうせ無理だからと誰も彼もがハナから諦め、本格的な調査を行ってこなかった、といった実情が隠されている予感がします。既に捕獲されているサンプルがどのような経緯で捕獲されたかは存じ上げませんが、もしサイカブトと同様にフェロモントラップに飛来した個体であるならば、調査の余地は十二分に残ります。例えばダイトウヒラタは後食を行わず、発生木の周辺で一生を送ります。サイカブト類同様の適応を遂げていたとてなんら不思議ではありません。海外に生息するこの手の種のように、林内のビロウやその他樹種の、樹幹部や根元に坑道を掘り、その周辺で一生を終える。そんな生態の妄想をしながら、帰りの飛行機に乗るべく空港へ向かいました。


6.エピローグ

滞在時間が24時間に満たない、まさに弾丸な旅になりましたが、かなりの満足感を覚え島を後にします。

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が、一つ問題が。忘れていたドクガの存在です。那覇空港に着く頃には、初めは腕の一部だけだった炎症部位が全身の柔らかい箇所(腹、腿の内側、首etc、、、)に広がり、想像を絶する痒みを味わうことに。今回、腕以外はタイツで覆う完全防御で臨んでいたために、この現象は不可解でした。調べると、直接幼虫に触れていなくとも、服越しに棘が貫通し、風に吹かれた毒毛が付着し、炎症を起こすそうです。なんだこのド害虫は。これらの毒毛は洗濯しても簡単に落ちないそうで、洗濯機を7回回しました。高熱水道費が会社負担で本当に良かったと思っています。正しい対処法は、刺された時点でセロテープ等で毒毛を除くことらしいですが、目に見えない毒毛が刺さっているかすらわからない以上、対処の仕様がありません。結局毎日ムヒを体に塗り込み、2週間ほど治るのを待つハメになりました。皆さんも気をつけましょう、と言っても気を付ける方法がありませんね。


今回のように適度な緊迫感、難易度がある採集は以下のようなルーティンを産み出します。

難易度の高いターゲットを定める

初日は大体悪天候でなしの礫打撲切り傷虫刺されに耐えながら、夜通し山の中を這いつくばり、がむしゃらに斧を振り、目標を達成する

この瞬間の開放感、興奮たるや、絶叫必至です離島は大体夜に雨が降ります。逆に日が出る頃には晴れる頃が多い為、大概採れる頃に光が差す感動的なシチュエーションが味わえます。

シャワーで汗を流す最高その1.

窓全開で海沿いを走る最高その2.

現地飯で腹を満たす最高その3.

簡単すぎても達成感を得られず、難しすぎても徒労に終わるor観光する余裕がないと、バランス感覚が大事になります。次回の記事はバランスが取れず苦行と化したエピソードです。



北大東産オオタニワタリとツルナ、青パパイヤを用いた料理ズ。FullSizeRender



社会人になってからは物見遊山をメインに据え採集から若干身を引きつつ海外を飛び回る予定でしたが、国内でやり残した事(ヤエコの成虫材割とチャイロホソの採集)がありました。昨年数度某島に赴いたものの、成果は出せず。ヤエコに関しては幼虫を採集済みですが成虫材割は叶わず、後者は無論擦りもせず。一度アリの巣より前胸のような物を見つけましたが十中八九ゴキブリか何かの体パーツでしょう。全く手掛かりが掴めない中雨の八重山を彷徨い続ける遠征を繰り返し、採集自体へのモチベーションが枯渇していました。

そのような折、ヤフオクでの国産希少種売買規制が発生。うち、ハチジョウヒラタやダイトウヒラタ、チョウセンヒラタにキンオニクワガタといった種はいずれ自己採集したいと考えていましたが、学生時代は専らハナムグリの固有種が生息する島にのみ赴いていたため、彼らの生息地である八丈島や大東島、対馬を舞台にした遠征は後回しにされてきました。そこで今回、巷では採集難易度が高いと言われている上記の種を採集することにより、自信やモチベを取り戻すと共に、先延ばしにしてきた課題を片付けてしまおうといった作戦を目論んだ次第です。


1.八丈島へ...

初回はクワガタ屋のメッカこと八丈島やりお送りします。完全に余談ですが、竹芝桟橋5回目にして私が長年愛読している漫画の舞台になっている事に気づきました。FullSizeRenderFullSizeRender


金曜の仕事終わりに竹芝に直行し乗船します。まだまだ寒い時期で、雨も相まって人がいない甲板は快適です。IMG_5566

ここで今回の舞台となる八丈島に関する解説をば。タイトルに「島流し」と入れた通り、この島には流刑地としての歴史が残っています。有名所は関ヶ原の戦いで西軍に属していた宇喜多秀家あたりでしょうか。一方で古来の航海技術では遠過ぎたのか、流刑地としての歴史は他の伊豆諸島対比新しく、江戸時代以降が主流となっています。ちなみに八丈島のみならず伊豆諸島全体には、流刑者、遭難者の存在が元となり産まれた海南法師関連の伝承や禁忌が残されています(〇〇日の〇〇時以降は家中の窓や戸を締め切り戸口に柊と魚の頭を飾り、一言も喋ってはいけない、海の方角を見てはならない、といった具合)殆どの島が野宿禁止ですが、特定の日に野宿をし、海を見てしまったら一体どうなるのでしょうか...。暗い歴史は流刑だけではありません。海上の孤島かつ作物が育ちにくい火山島という性質上、飢饉とは切っても切れない関係がありました。19世紀に薩摩芋が持ち込まれるまで幾度となく飢饉に見舞われたこの島には、口減らしや姥捨にまつわる史跡等が多数存在します。他にも第二次世界大戦時に本土上陸を防ぐ前線基地として島中に砲台や塹壕トンネル、戦車用の一周道路が作られているなど、話題に事欠かない島であります。虫オタクin塹壕の図FullSizeRender

今回も例の如く雨天に見舞われ、天気の合間を縫い昼夜を問わず山に突撃しましたが、上記のような事情の手前若干の抵抗がありました。FullSizeRender

ここまで八丈島に良からぬ印象を抱かせかねない内容になってしまいましたが、実際の所は「沖で見たときゃ鬼島と見たが、来てみりゃ八丈は情け嶋」と言う民謡に示される通り、流刑者に対する扱いは悪い物ではなかったようです。島全体にゆったりした時間が流れており温暖な気候と雄大な自然が相まって、東京から乗り継ぎなしで訪れることが出来る手軽なリゾート地として、一昔前は人気を博していました。沖縄返還前には多くの人が新婚旅行で訪れた先であり東洋のハワイなんて異名もあったとか。現在もダイビングや大学生の一人旅行先として人気があるようで、私が宿泊したユースホステルにもそのような方が複数名みられました。

歴史のお勉強はここまでにして、話を当ブログの趣旨的な部分に戻します。この島に目ぼしいハナムグリは生息していません。強いて言えばムラサキツヤの黒化型と移入種のリュウキュウツヤが生息する程度です。一方クワガタに関しては独自の進化を遂げており、4つの固有亜種が生息しています。東京から船や飛行機1本で行けるアクセスが良さも相まって、離島クワガタ採集の登竜門として、根強い人気を誇る島であります。その中でも、毎年多数の採集者が訪れるにも関わらず採集が困難とされている種が1種存在します。


2.今回の目標を知る

そんな今回のターゲットは「ヒラタクワガタ」です。今更ヒラタを!?といった具合ですが、この島のヒラタは面白い事に、島内にAB型といった二つの「型」が生息しています。両者とも共通して

日本亜種(本土の個体群)と比較し

体躯が細長く、小型化する

光沢が強くなる

脚部は短く、前脚ケイ節が幅広になる

オスは後脚の段刻が一つ

メスは眼上突起が目を完全に覆わない

といった違いがあるものの、最大の違いはオスの大顎にあります。A型のソレは本土ヒラタに非常に酷似した内歯下りで、特段魅力的には思えません。一方B型の大顎はさながらコクワやはたまたウンナンヒラタのように、前方にスラッと伸びた顎に内歯上がりと、極めて異質な特徴を備えています。

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かくいう私も知人より譲り受けた個体を 2020年頃まで飼育していましたが、産卵数が確保できず偏って終了。私のズボラ管理を抜きにしても他種対比産卵数が少ない印象でした。本種は他のヒラタ類と異なり材に好んで産卵します。希少性と関連があるのでしょうか。上記のような事前情報もあり、ヒラタの採集自体は容易でした。が、残念ながら採集した幼虫がA型であるのか、B型であるのか判別する方法はありません。成虫が活動していないシーズンにB型を狙って採る行為は困難を極めます。A型に関しては島内全体に広く生息している一方で、B型に関しては生息域が超局所に限られており、かつ近年では道路開発等により両者の生息地間での往来が容易くなり、交雑が起こっているといった噂もある等、中々に向い風な状況。また、タチの悪いことに、両型に際立った生態の違い等はなく、ただただ数十四方メートル、島の一部に点在するポイントを知っているか、しらみ潰しに島内を探索できるかが採集の鍵となっています。要するに材割での採集を試みる場合、の判別がつかないまま、実質採れているか採れていないかわからないままモチベを維持しつつ、タイムリミットまで無限に採集ポイント数を追加する、といった行為、もとい気力が求められます。成虫活動時期の採集に甘んじれば良いのですが、幼採専攻の意地が許しませんでした。

ちなみに本種(八丈ヒラタ)の個体数減少要因として「マニアによる採集や材割行為」が騙られています。無論、少しでも環境関連に理解がある方であれば、採集者が個体数に与える影響が微々たるものである事が理解できるでしょう。こと八丈島においては素人目に見てもわかる程無計画な道路の開拓による島全体の乾燥が八丈ヒラタのみならずクワガタ類全体の減少を招いています。そもそも、島民が人里の周辺を切り拓けば、切り拓いた場所やその周辺は徐々に乾燥します。併せてクワガタも徐々に減少することは火を見るより明らかです。それを「我々が子供の頃にはもっと沢山いた」「採集者が原因で減少している」などと曰う様はなんとも。
そもそも個体数が減っているのはあくまで一般人の目に留まるような場所での出来事であり、山中等の環境にも同様のことが言えるのか果たして疑問が残ります。さらに、無知な虫屋が道沿いのカラカラに乾いた、コクワですら入るか怪しい材の地上部を割り散らかす、材を起こしっぱなしにする。上記の行為が無知な島民の目に留まり個体数減少の要因に仕立上げられる。最悪の悪循環が産まれている状況です。虫屋たるもの一般人が侵入できないような箇所で採集を行うべきですし、そのような環境には毎年沢山の発生源が追加されるため採集者如きの活動が生態系に悪影響を及ぼす心配もありません。オオクワ問題でも頻繁に物議を醸していますが、素人がその辺りの加減を理解せず一元的に材割批判をする様も腹立たしいものがあります。そのような連中に限って「採集中に島民から声をかけられたが、規制の中で採集していることをしっかり説明したら理解してくれた(バチバチに怪しいけど面倒なオタクがマシンガントークを仕掛けてきたので渋々引き下がった)」などと発信している様子をよく見かけるのは気のせいでしょうか。無知な一般人と無知な採集者、限界バトルの先に見るものとは...!

3.八丈島のクワガタ幼虫達

またまた話が逸れました。採集記に戻ります。

今回の採集時間は48時間。土曜日の朝に島に到着、そのまま(初日)全種を回収し、日曜日にヒラタの産地数を追加。月曜朝の船で帰る作戦です。強い海風の影響を直に受ける八丈島に生息するクワガタは、どの種も飛翔は確認されているものの、基本的には歩行を主体とした生態が特徴となっています。その為成虫の活動時期には歩行中の個体や接地材の下に潜んでいる個体を回収する、少々特異な採集方法が主流です。しかし幼虫採集の方法に関しては特殊な手法はなく、一般的なヒラタ採集と同じ様に埋没材を中心に探します。

産地について少し触れておくと、B型の大まかな産地としては島の南東部が有名です。恐らくこの記事に辿り着いた方の最大の関心は「詳細ポイントに繋がる情報を得られるか否か」だと思いますが、地区名まで特定したとてポイントを当てることが困難な状況である為、公開しても意味がないのかなと思います。FullSizeRender

私も事前情報を備えないまま突撃し、最終日の夜中に、20年程前の月刊むしに掲載されているポイント情報(某中学校の裏手)を知りました。が、結局当該ポイントからもA型の成虫が出た為に、やはりB型のポイントは自分で探す他ないのかなと思います。

ハチジョウノコギリについて

以上の内容から、今回の目標に辿り着く為に突破すべき第一の障壁が産地を当てる事だとご理解頂いたかと思いますが、材割でヒラタクワガタを狙う以上避けられない障壁がもう一つあります。それはノコギリクワガタの存在です。南西諸島ではノコギリを狙う上で際限なしに湧くヒラタに悩まされる事になりますが、本土や八丈といった高緯度帯ではヒラタを狙っているのにノコギリしか採れないといった事態に遭遇します。一応この島のノコギリは種として記載されている為、一般的な虫屋からすると嬉しい代物かもしれません。しかし、ヒラタを狙う限りでは、どんな粗末な材でも積極的に利用する本種の存在は鬱陶しいことこの上ないものとなります。
一度胴体ほどの太さがある立ち枯れを薙ぎ倒せば数十頭単位で出てきます。
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地上部は芯のみ残し風化しているような細腕ほどの材でも、地中部で逞しく生存していたり。
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このように、無限に出土する幼虫に飽々することになりますが、成虫は中々見られず。本土ノコギリの場合は立ち枯れ直下に蛹室を作成している事が多い一方、本種はそこそこ深い箇所に蛹室を作っている印象でした。あくまで所感ですが、八丈は場所を問わず島全体の土壌が緩く蛹室を作るのに相応の深さが求められているように感じました。(ここ飼育に繋がるかもしれないヒント1.)ハチジョウノコギリは体色が殆ど黒色で、寸詰りな体型やノコギリ状の7本の内歯が特徴です。FullSizeRender

肝心のヒラタとの棲み分けに関しては後述しますが、ノコギリがかなり劣化、土化した材でも埋まってさえいれば利用する事に対し、ヒラタはある程度硬さがある、やや生の、水分が多い材を好みます。ヒラタが材の内部にギチギチと詰まっているケースが多い事に対し、ノコギリは材の表面近くに柔らかい食痕を走らせ、部屋のような物を作り巣食っているケースが殆どです。その為立ち枯れを蹴飛ばしたのみで幼虫が出てくることや、一刀目でクラッシュしてしまう事もしばしば。FullSizeRender

ハチジョウヒラタについて

ハチジョウヒラタに関しては少々面倒で、材の比較的深部に巣食っており、簡単に言えばノコギリ対比しっかりと割る手間が求められます。

個体数は可もなく不可もなくと言った具合で、概ね本州で言えば東海地方のヒラタ等と同程度の密度であるように感じました。IMG_5619

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先程水分が多い材を好む旨を記述しましたが、同時に水分が多い材は劣化が早く、ノコギリとの競合が発生してしまいます。意外にも本種を選択的に採集するには、やや乾燥気味の立ち枯れ根部を割ることが近道であるように感じました。(勿論地上部からはコクワが出る)IMG_5698

個体数が多い一部の海岸沿いでは乾燥によりフレーク状になっている立ち枯れの地上部からも得ることができました。ヒラタに関しても幼虫の数に比較して成虫を得られることがあまりなく時期ハズレを疑いましたが、十中八九私の実力不足でしょう。

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ヒラタとノコの幼虫判別については頭部の形状や色味判別する手法が主流ですが、巣食う材の水分量や雌雄差といった不確実な要素を多分に含む為、私は気門での判別が一番手っ取り早いと考えています。
ヒラタの気門が明瞭なc字を描く一方で
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ノコギリの気門はIの字形になります。
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その他クワガタについて

他にも八丈島にはコクワガタ八丈亜種、ネブトクワガタ八丈亜種、チビクワガタが生息しています。
赤い体色と細身の体躯、顎が特徴であるコクワは樹種を問わず一般的な白色不朽材から椰子科の樹木に至るまで幅広く利用しています。基本的には地上部の材を利用します。

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ネブトは腐植質が堆積する土壌に広く薄く生育しており、ヒラタ狙いで材を探していると副産物として多数得ることができます。本土の個体群(日本亜種)と比較して内歯が細くなるらしいですが、正直興味がありません... わざわざ赤枯れを割って回る必要はありませんが、勿論赤枯れからも多数得られました。
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他にもチビクワなどが生息していますが、チビクワが巣食う材は一般的に地上部のやや乾燥気味細枝や太材の表面のみ朽ちた箇所が中心であり、上記のような根食種が巣食う箇所とは全く異なる箇所に生育します。本種を多数採集できる採集者は...つまりそういう事です。
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そんなこんなで、初日で必要分の幼虫を確保。
雨天の為、この日は早々に切り上げて就寝。
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4.エピローグ

手抜きが透けて見えるようで恐縮ですが、2日目以降については伊豆諸島に多く自生している明日葉や、ヒラタを追加しつつ回収しつつ野湯などを満喫。

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最終的に合計8ポイントよりヒラタを得ました。出る幼虫を全て持って帰っていてはキリがないのでタラの芽を取るように1ポイントから数匹だけ持ち帰り、撤収。手抜きが透けて見えますがただヒラタを追加して回るだけの冗長な行程でしたので、詳細は割愛させていただきます。

個人的なエピソードをお話しすると、奇を衒い常人が行かないようなポイントに向かうべく垂直の崖を壁面に生える木伝いに登ったもののその先に何もなかったり
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最終日の夜中に月刊むしのヒラタポイントを知り、急いで回収に出かけなければならないタイミングで、雨天の中原因不明のパンクに見舞われたりといったことがありました。ちなみに、野湯に入りに行った際に何故か脱衣所に未就学児ほどの服と靴が、綺麗に畳まれた状態で残っており、不気味さを覚えた直後の出来事であります。

これまた余計な自分語りですが、私の採集遠征は「最終日は必ず徹夜する」といった恒例行事があります。大抵の場合夜中は雨が降り、泥塗れ傷だらけになりますが、それでも諦めず粘ると、明け方に成果が出るケースが多いです。そしてこれまた大抵の場合、夜明けと共に晴れ間が覗く為、さながらゲームのような、感動的なシチュエーションを臨むことができます。

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船内のシャワーで汗を流し、光る水面を眺め、海風を全身に浴びながらカップ麺を啜る。至上の幸福です。

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帰宅後はお土産で購入した島醤油で島寿司を、明日葉で天ぷらうどんを作ったりと、余韻を(物理的に)噛み締め、今回の旅は幕を閉じました。紹介が遅れてしまいましたが、八丈島ではワサビが手に入らない為、唐辛子を醤油とダシに漬け込んだ「島醤油」でネタを漬け込み、甘いシャリと西洋ワサビを合わせた「島寿司」といったグルメが特産です。
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結局、成虫のハチジョウヒラタB型は得られませんでした。目下幼虫を飼育中であり、この遠征が成功であったのか失敗であったのかは、役半年後に判明することになります。(本記事に追加する形で結果を発表するか、別途記事を設けるかは検討中です)確実に言えることは、材起こしの時期にポイントを絞り、割りに割く労力を必要最低限に留めることが勝利への近道である、という事です。


今回の記事は以上になりますが、このシリーズはあと2本続きます。



この記事は2019年に執筆した物を再編集した物です。

私はミヤマクワガタを知りません。思うにミヤマの成虫採集は国内で最も競技人口が多い種目ではないでしょうか。同時に何十年も続けていらっしゃる方の知識量を前にするとまるで自らが何も知らないかのような錯覚を覚えます。そんなミヤマ採集ですが、灯火で70upは抜けずとも、例の如く幼虫の生息環境については人並み以上に把握しているつもりです。手軽かつ奥が深い成虫採集に取り組む傍ら、この機会に本種の幼虫環境を知っておくこともまた一興なのではないかと思います。

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0.島嶼のミヤマ

本題に入る前に、今回も小話を挟みます。ミヤマは歯型に注目が行きがちですが「足の色」に注目されることはあまりありません。通常ミヤマの脚はケイ節のみに黄紋を呈しますが、黒島や福江島の個体群は腿節にも同様の黄紋を呈することが知られています。福江島のミヤマは比較的個体数が少ないとされていますが、生息数や低地において生き残っている理由など諸々が横浜ミヤマや千葉ミヤマと同様の背景を持っているのではないかと思います。

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また、隠岐西ノ島のミヤマも同様の特徴を呈するようで、複数個体採集した結果どれも横紋を呈していました。

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島嶼のミヤマ自体、腿節の黄紋が固定される傾向にあるのかもしれません。

1.本記事の構成

さて、今回はミヤマ(maculifemoratus)の幼虫生息環境です。最近良く質問されるので、違うお友達の記事も書いてしまおうかと危うく揺れていましたが、引退するまで温存しておきます。少なくともアレは本種の生態とは全くの別物ですし、リュウツヤのお陰で現在巷に出回っている既存情報とも多分に相違が産まれてきているものと思われます。むしろ一周回ってオオシマアオハナムグリの生態記事を参照した方が余程参考になるとすら思いました。ミヤマ幼虫が立ち枯れ地中部に巣食うこと自体は既に広く認知されています。そのため、単純に「立ち枯れ掘ったらミヤマ出ました!」と言った記事では面白みに欠けるでしょう。聞いてるか4年前の自分。本記事ではより解像度を上げるため、ノコギリという最大の競合種とどのような棲み分けをしているかという切り口から、ミヤマ幼虫の生態に詳しく迫ります。

ちなみにミヤマの幼虫は本土産国産クワガタの中でもかなり特徴的で、体毛や丸みを帯び黒々とした太い顎、幼虫ながらに音を発するといった特徴から判別が可能です。

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2.利用する材の状態や枯れ方の相違

両種とも条件に対して寛容な傾向にあり特定の枯れ方に依存しているといったことはありません。加えて、野外においては飼育下で重視されるほど水分量にもこだわりがなく、極端に乾燥していなければ問題なく利用する傾向にあります。肝心の材の様子ですが、簡単に言えば、ミヤマとノコが混成するような地域ではミヤマはやや腐朽が進んだ材を、ノコは生に近い物からかなり腐朽が進んだ材を利用します。この場合ノコとしてはオオクワが入るような綺麗な白枯れ材の埋没部を好むようです。反面、ミヤマのみが生息する高山帯では、ミヤマ自身かなり腐朽の進んだ材からヒメオオが入るような腐朽が浅いものまで広く利用しています。

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要するに、材の好みにうるさい訳ではないため採集の指標としては役に立ちません。飼育的な観点から役に立つ情報を述べるのであれば、やはり断然腐朽が進んでいない材から得られる幼虫の方が大型化する傾向にあります。また、あくまで所感としてですが、生木に近い木から幼虫が出土する場合、個体密度は低くなる傾向にあるように思えました。あくまで予想に過ぎませんが、腐朽の浅い資源は本来消化に適した範囲から逸脱しており、大型化はするものの、生存率自体が下がってしまう餌資源と言えるのでは無いでしょうか。

3.幼虫の生息密度

先程個体密度に触れましたが、本節では同じ材内において多数の幼虫達がどのように暮らしているかといった意味での個体密度に触れます。
ご存知の方も多いかと思いますが、ミヤマやノコはステージごとに生活する場を変えます。

ミヤマは初令〜3令の間は同じ材内で寄り添うように生活し、3令中期になると材を脱出し、地中にて単独生活を送るようになります。

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太もも程度の細さの材から出たミヤマ幼虫ズ

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対照的に、ノコギリの場合は、1.2齢の間はお互い距離を取り単独生活を送り、3令ともなればお互いが触れ合うか触れ合わないかギリギリの距離感で、寄り添うようにして蛹化のタイミングを待ちます。次節にも関係する内容ですが、ミヤマの場合材と地中を広く利用する反面、ノコギリの一生は材周りで完結するという違いがあります。

4.どのように材を齧るか

前節で、両者が各ステージにおいてどこで生活しているか、という点に触れました。双方若齢時は一般のクワガタと同じく材の内部から材を食い進みますが、3令になると特徴的な材の齧り方をします。正確に言えば「どこから材を齧るか」といった点が特徴的です。

ミヤマの場合、幼虫は3令になると程なくして材を脱出し、土中から材を齧るようになります。蛹化直前のギリギリまで材周辺にいるようで、高山帯で立ち枯れを蹴っ飛ばすと、材が割れずとも幼虫が出ることがあります。

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一方ノコギリは3令になっても、材の体積が小さい、状態が悪いといったことがない限り、基本的に材を脱出しません。3令幼虫は材内部に蛹室とは異なる部屋を作り出し、内部で自ら壁を削り木屑を発酵させ劣化させた後摂食するという器用な芸当をこなしています。3令に栄養価の低い餌を与えることで暴れや腹ボテを防ぐといった飼育技術がありますが、上記の生態と繋がっています。勘違いされがちですが、ノコは土などを摂食している訳ではありません。

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5.どこに蛹室を作るか

3令時に過ごす場所は蛹化する場所とも密接に関わっています。両種とも漠然と地中に蛹室を作る旨は知られていますが、やはり一口に地中と言っても棲み分けがなされています。
ミヤマは、地中のかなり深く、1メートル前後の粘土質土壌に蛹室を作ります。勿論そのような深さともなれば立ち枯れの根部が途切れていることも多く、本種がただひたすら鉱石土壌を掘り進んでいることが分かります。長い休眠期間を過ごすには深い安全な箇所で蛹室を作る必要があるのでしょう。


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石等も利用して器用に蛹室を作るようです。

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観察事例が少ないために断言はできませんが、ほとんど全ての個体がある程度の深さに蛹室を作っているものと思われます。ヒメオオ材割りに赴く際、根際を掘ったり立ち枯れを蹴り倒す際に、度々ミヤマの3令幼虫は目撃しています。しかし、新成虫は意図的に掘り起こした際を除いてただの一度も観察したことがありません。このことから、1メートル前後の深い箇所まで潜っているとまでは行かずとも、少なくとも何かの事故で容易に掘り起こされるような浅さには蛹室を作っていないことが予想できます。

一方、ノコギリは土壌さえしっかりしていれば地中の比較的浅い箇所、幼虫時代に巣食っていた材のほど近くに蛹室を作ります。そのためにマイマイカブリやオサムシを採集する方々が根返り等から新成虫を掘り出す事例が多々存在するわけですね。

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以上のように、生活圏が被る両種といえども、緻密な棲み分けをなしています。

ちなみに、野外でミヤマ新成虫を掘り当てるメリットがあるのかと聞かれれば、ほとんどありません。夏季であればいとも簡単に採集できる本種ですが、新成虫を掘り出すともなれば土石混じりの土壌を1メートルほどひたすら掘り進むという苦行が待っているからです。勿論鉱石土壌中には食痕が残されていないため、掘った先に新成虫がいるかどうかもわからず、ハッキリ言ってコスパが悪いことこの上ありません。そうは言えども、新成虫の輝く金毛と赤みがかった体色は非常に美しく、泥に塗れてでも一見する価値はあります。飼育で見れるだと貴様この野郎成果よりも過程に重きを置く人にとってはチャレンジしがいのあるアクティビティかもしれません。

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私はスジクワにもかなり思い入れがあります。スジクワ材割の記事は高校時代に一度執筆しており(現在は非公開です)当時から「この経験を屋久島で活かし、記事を書く」と決めていました。


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予定通り屋久島でスジを採集したので伏線回収的な意味も込めています。決して密かに応援している知人が屋久島に赴くからといった事情とは無関係です。さて、樹液採集で他種のオマケのように採集されがちなスジですが、幼虫は勿論他種と棲み分けを成しており、狙って採集することも可能です。しかしながら役に立つ場所は現状国内においてただの一箇所、つまり屋久島ぐらいしかありません。私自身書きながらこの記事の存在意義に疑問を覚えています。


1.スジクワあれこれ二つの系統

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スジクワといえば郊外の雑木林や河川敷から、1500メートル級の高山まで生息している愉快なお友達です。山地性の傾向が若干なきにしもあらずといった感じですが、低地に生息する個体群の方が大型化する傾向にあります。では、高山地帯で採集できるスジクワは大型化しないのでしょうか?あくまで噂ベースとして、高山帯に生息する個体群は野生では大型化しない、とのことです。これは特段私が検証をしたという訳ではありません。高山特有の低温環境が成長を妨げている、といった環境的な要因ではなく根本的に低地の個体群とは系統が違うために大型化しないようです(本当か〜?)

低地〜中山帯に生息する本種は、余程の小型個体でない限り内歯を有します。一方で、高山帯に生息する本種は殆どが内歯がないしょぼくれた2センチ前後の個体が殆どです。低地だからといって、ある程度のサイズが保証されるといったことはありません。あくまで高山帯において内歯が発達するサイズの本種が見られないに留まります。都内の多摩地区など、河川敷といった低標高かつ比較的温暖な環境においてもスジクワは確認することができますが、そのような環境に見られる個体は十中八九小型で、コクワの極小個体と勘違いされ見向きもされない例が多いように感じます。

これらの個体が小型化する要因として考えられるものは二つ、単純に河川敷の暗澹な気候が合わないか、上流の高山ブナ帯から流れ着いた個体群が定着しているかの二つです。河川敷スジをカワラ等で飼育した結果小型個体しかでないようであれば後者の説が有力になってきそうですが、私自身やる気にならないのでどなたかお願いします。この噂話を出したのは単なる蘊蓄披露ではなく幼虫環境の解説に関係があるからです。詳しく見ていきましょう。


2.幼虫環境 低地

まず始めに本種が入る物件を探しやすい環境について触れます。物件と違いこちらは不確定要素を多く含む特徴ですが、傾向として本種は成虫幼虫共に薄暗い環境に生息することが多いように感じます。この傾向が正しいかどうかすら不明ですが、理由付けを行うのであれば下記の通りです。まず、基本的にスジは「綺麗な白色腐朽材」をあまり利用しません。白色腐朽菌は風通しの良い場環境を好む傾向があります。また、そのような環境においては、飛翔という移動手段が支障になりにくくあります。スジと同所的な環境を利用し、生息域が被りがちな種にノコギリがあげられますが、白色腐朽材自体も、それを生み出す飛翔が邪魔にならない環境もノコギリにとって有利なものです。反面、スジが好むであろう薄暗い環境は、得てして高湿度であり、綺麗な白色腐朽材が少ない傾向にあります。一概には言えませんが、このような「薄暗い環境」の例には北側の斜面や木の密度が濃いと言った環境が挙げられます。木の密度が濃い場合、飛翔という手段はあまり好ましいものではありませんが、スジの「基本的に飛翔を行わず、歩行を多用する」といった習性が理に適ったものとなっています。明確な棲み分けとまでは言えないもののノコギリとはうっすらと差別化を図っているように思えます。

環境については以上です。続いて物件(材の様相)について解説します。

本種が入る物件を大別すると

・綺麗に枯れていない埋没材の表皮付近

・上記のような物件の分解が進んだ黒枯れ材

に別れます。綺麗に枯れていない埋没材とはどのような材でしょうか。想像がつきにくいと思いますので、画像を交えつつ確認していきましょう。後者に関してはPCに画像を保存しており現在pcが大破しているため画像をアップロードできません。半年後ぐらいにアップロードされていると思います。

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画像をご覧頂くと共通する特徴がお分かりになるかもしれません。材の外観的な特徴を述べると、黒い線が入っていたり、材の樹皮が消失していること、黄土色に朽ちていること等が挙げられます。まず材に入る黒い線について、材を分解する幾つかの菌が拮抗し合っている境界線だとか、雑菌が混入しているといった説があります。水分が多い埋没材ともなれば様々な菌が繁殖することも納得できます。詳細は不明ですが、この黒い線は多分に水分を含む材に重点的に見られることから、特定菌種による腐朽が成す特徴かもしれません。(マンネンタケ?)
このような材は得手して肉質が悪く、表面や一部が柔らかく他は極端に固い場合が殆どです。硬いと言えども新しく朽ちてないが故に硬いわけではなく、古くなっても尚硬いような材が殆どであるように思えます。れは二つ目の特徴とも合致しますが、樹皮が失われる程度に古くなっても硬いまま残っている材が多いように感じます。硬さは画像で伝わりませんが、下画像はスジが多数入っていた埋没材で、黒い箇所は硬くて削れない材の表面となっています。

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色味に関しては埋没自体が水分を多く含んでいるといった要因が考えられますが、水分量が多いということは、通気性の良い環境を好むカワラ菌とは異なる菌により朽ちている可能性が高いとも言えます。埋没材であっても綺麗な白色腐朽が見られるケースは多々あり、そのような箇所にはノコギリが入りますが、スジは入りません。下画像の材では右からノコギリ、右からスジが出土しました。

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スジの幼虫形状はかなり特徴的なので判別が容易です。言語化は難しいですが、他種のような一般的なC字姿勢とは異なり細長い体躯のために尾の部分が頭の位置より伸びるシルエットや水分が多い材を食す種に見られる腹部の紫がかった内容物等が特徴として挙げられます。

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掘り起こした後の、材をさらに割った際の視覚的特徴を述べたために「結局どんな材を探せばいいんだよ」と怒られそうです。上記の特徴を簡単に言い換えると以下のようになります。
湿度を多分に含んでおり、かつ古めで硬めの白色不朽でない埋没材

一口に埋没材と言えども、倒木が土に埋もれているのか、立ち枯れの根部を指すのかといった違いがあります。結論から言えばどちらも利用しますが、やはり圧倒的に後者に多い傾向があります。このような材は地上部を見ても殆ど芯だけしか残っていなかったり、見るからに貧相で枯れ方が悪いような印象を受けるため判別が容易です。本種が、所謂他種が利用しないような「粗悪な環境」を優先的に利用しているか否かは不明です。少なくとも真っ新な白枯れ等を利用しているケースは殆ど無に等しいかと思われます。少なくとも私は見たことがありません。本種は材のどのような部分を食すのかという点も特徴的です。硬い材を利用すると言えども、スジが材の中心部にまで食い込むことは稀です。大抵の場合スジが入る埋没材の表面には所々柔らかい部位があり、幼虫はそのような箇所から硬い部分に沿うように材の周りを食い進めます。蛹化も同様の場所で行われます。そのため、立ち枯れを蹴飛ばしたりひっくり返した時点で柔らかい部位が分離し、幼虫や新成虫が出てくると言ったことも少なくありません。同時にスジが好んで利用する柔らかい場所は大概硬い部位に囲まれており、割り辛いことこの上ありません。硬い部分を割ろうと獲物を振り下ろしたら、本体に直撃...といった事故が最も多い種だと考えています。

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他にも湿度の高い倒木下部や、細枝、埋没or接地している黒枯れ材にも入りますが、やはりダントツで立ち枯れの根部から多く出ます。逆にノコギリ等と異なりどんな細い木の根でも、どんな粗末な枯れ方でも出るために、粗末な材に狙いを絞ることで本種も狙って採集することが可能です。


3.幼虫環境 高地

続いては高山に生息するスジの環境特徴です。基本的には平地と変わりませんが、こちらの方がより幅広い環境に生息しています。

平地では立ち枯れの根部に圧倒的に多いスジですが、高山帯では立ち枯れは勿論、あらゆる倒木の接地面から出ます。まるでヒラタにおける関東と関西の違いのような印象を受けます。また、高山では同所的にヒメオオやオニクワ、ミヤマが混成します。先程述べた平地におけるスジ材の外見的特徴はヒメオオ材に近いのでは、と感じた人もいるのではないでしょうか。

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実際に高山スジはヒメオオと同じ材から出ますが、スジはより表面の古くなっている箇所を、ヒメオオは内部の未だ硬い箇所を食い進んでいるようです。また、スジが多く出る材に入るヒメオオは得手して小型です。これは、材自体が古くなり過ぎておりヒメオオに適した状態で無くなっていることが原因かと思われます。一口に倒木や立ち枯れと言っても特徴があります。まず、基本的に高山ブナ帯においてクワガタが入る朽木は、平地のサクサク割れる綺麗な白枯れではありません。上画像のように菌が回っているものの、しっかり硬く水分を含んでいるような材を中心に利用します。基本的には分解が浅いとヒメオオが、少し分解が進むとアカアシ、より古くなるとスジ、黒枯れ化するとオニが利用するといった棲み分けをしているようです。ヒメオオ材をブロックハンマーで崩すにはかなりの労力を要しますが、スジが好む材はブロックハンマーで容易く崩せる程度に古くなった物であり、特にアカアシやヒメオオが利用した結果、食跡が縦横無尽に走っているような、苔むした倒木の、設地面から多く得られます。こちらも画像を貼るに越したことはありませんが、高山帯ブナ帯におけるスジの個体密度は、平地のコクワと同程度であり、わざわざ撮影していないという事情から掲載に至っていません。同所的にオニクワガタと混生しますが、オニクワはより水分が多い完全な黒枯れフレークに近い箇所を重点的に利用していることから棲み分けが為されています。

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4.屋久島の事例

続いて、屋久島での事例を紹介します。

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上画像は本土スジの赤みがかった個体です。うーん騙された人もいるんじゃないかなwヤクスジと本土スジの形態差異として、体色だけでなく、内歯の上下長さの違いが挙げられます。ヤクスジの方が一般的に長くなる傾向にあるようですが、皆さんは判別がつきますでしょうか。ちなみに、下画像はどちらも35mm個体です。是非比較してみてください。


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本題です。屋久島においても幼虫の生息環境や物件は変わらず、標高500m前後から多産するように感じます。標高を下げすぎるとコクワが増え上げすぎるとオニが増える印象を受けます。本土であればオニが幅を利かせている環境は高山帯に限られているため、スジ材の条件はさほどシビアではありません。しかしながら、屋久島においては標高500メートル地点においてもオニの個体数が極めて多いため、倒木やただの埋没材といった物件からスジを採集することは少々面倒が伴います。屋久島でスジ材を確実に当てるのであれば、冒頭に紹介したような立ち枯れ埋没部の古くて硬い粗末な枯れ方をしている材を探すことが最短ルートかと思われます。

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三重でスジ材を割りまくっていた時代から屋久島スジを出すことを夢見ていました。結局その些細な夢は叶ったのですが、欠航や天候により夜間の大雨の中、2時間程度しか採集時間を確保できず、肝心の材でも幼虫を4匹とオス成虫を潰すという痴態を犯し、不完全燃焼ここに極まれりといった具合でした。観光等もできなかったため、いずれ再び赴きたいと考えています。



余談ですが、海外においても生息傾向は概ね変わらないようで、台湾でも同様の材から近縁種が得られています。SNSで雲南地域の材割光景を見ている限り、こちらも近縁種が見事に同様の材から得られている旨が窺え感動しました。

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国産スジに限定すればあまり役立たない情報も飼育の材料と捉えれば活用範囲は広がるのではないでしょうか。リョフ、ゴンシャン、フジイetc...スジクワ幼虫の利用環境概説は以上となります。画像という視覚情報を欠くと、これ程にまで説明が難しいとは思いませんでした。むしろ画像があったとしても伝わらない特徴も多々あるので、言語化の訓練が必要かもしれません。更に言えば言語化が上手くできないということは環境の観察事例が足りて無いと言えます。まだまだ改善点はありそうですね。



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