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1.基本情報

和名:シナハナムグリ(朝鮮半島亜種)
名:Protaetia(Potasia) famelica scheini
   Miksic,1959
体長:16.4~19.7mm

生息:対馬

国内では対馬のみに生息する。詳しい範囲は不明だが、原名亜種は中国の北部に、本亜種は朝鮮半島や中国の周辺地方に分布。つい最近まで珍品の扱いを受けており、島内でも分布は局所的。ハナムグリは幼虫が未発見(公式の記録としては残っていないが、実際私のように論文を執筆報告していないだけで発見している人は多いのではないか)である種が少なくないが、本種もそのうちの一つ。

2.形態

風貌を一言で表せばイシガキシロテンハナムグリ対馬亜種。頭楯は中央部で凹圧し、翅端部は殆ど尖らない。シロテンハナムグリに酷似しているが、本種の体躯はかなり小型になる。一見すると地味な種だが、フ節が鮮やかな緑銅色に輝く。色彩変異は少なく、基本的に暗銅色、稀に緑銅色や赤銅色。FullSizeRender

シロテンハナムグリとの比較
本種の生息域にはシロテンハナムグリ(以下シロテン)も当たり前のように生息している。

シロテン@対馬
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シロテンでも小型化する個体やフ節が緑銅色になる個体は存在する。両者の判別は中胸腹板や前胸点刻の観察により可能。

ほとんど同サイズのシロテン(左)との比較。
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中胸腹板の形状。シロテンは扇子型に近い。
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シナハナムグリ。横幅が狭い。
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前胸の点刻。シロテンの前胸部は中央にかけて点刻が消失するため、強い光沢を放つ。
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一方シナハナムグリの前胸点刻は、本種自身の上翅やシロテンの前胸部と比べ細かく密。より中心部まで同じ密度で刻まれている点も特徴。

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他、上翅白紋に関してシナハナムグリの方が細かく広範囲に発達する、腹面の体毛が濃い、上会合部や凹圧部の凹凸が強い等の特徴がある。どれも微々たる差異であるが、前胸の点刻や光沢は野外で観察した際にも雰囲気の違いとなって現れるため、判別を大きく助ける。

雌雄判別
雌雄判別は尾節板で行う方法が容易い。

雌尾節板。大きく突出する。FullSizeRender

側面は凹圧されない。
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雌前脚ケイ節。明瞭な3外歯を備えるが、生息地環境のせいか発生初期でもすり減りが激しい。
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雄の尾節板。あまり突出しない。
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側面は若干凹圧されるが、わかりにくい。
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雄前脚ケイ節は雌対比若干幅が狭いが、こちらも明瞭な3外歯を備える。判別の材料として用いることは難しい。
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幼虫形態
成虫を採集した箇所より本種の幼虫と思われる(同所的に生息するシロテンハナムグリの幼虫とは風貌が異なる幼虫。飼育品の画像は確認済)を多数採集した。以下、幼虫に関して言及する事柄は、全て採集品がシナハナムグリであるといった推測に基づいている事をご留意されたし。

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幼虫の形態もシロテンに酷似しているが、やや小柄で体毛が濃い。後述するが、幼虫は礫岩主体の土壌に僅かに積もった堆積物を食している可能性が高い。そのせいかシロテンと比較して体幅が胴体から頭部にかけて大きく狭まっており、より潜行に適した形状となっている。(赤矢印の角度が急で頭部が小さい)

3.生態

成虫は5月上旬より8月下旬まで発生し、各種樹木や草本の花に集まる。Protaetiaとしては珍しく、発生のピークが5月中下旬と早い。既知の限りでは5月中に産卵された個体は晩夏に羽化し、翌年まで休眠するとある。一方で成虫の発生時期にも幼虫が得られることや飼育下では一年での羽化が確認されている。観察例が少なく要検証ではあるものの、アオハナムグリ等と同じく5月の早期に産卵された一部個体が晩夏に羽化し後食後に越冬し翌年産卵するのみであり、殆どの個体は幼虫や繭玉で越冬する単純な1年1化
であると推測できる。(あくまで推測)

島内でも分布は局所的で、海岸沿いに多い。生息域に樹液木があり、かつシロテンハナムグリやケシキスイ、スズメバチ等が利用する程に発酵していても、本種は花を選択的に利用する。発生時期、餌資源共に同所的に生息するシロテンハナムグリとの棲み分けが為されている。
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同所的に生息するコアオハナムグリやクロハナムグリが立地を問わず様々な木の花を利用する一方で、本種は同じ斜面同じ樹種でも、特定の木に集中する傾向が観察され、特に風の影響を受けにくい箇所に多く見られた。
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生息ポイントでも1.2キロ程内陸に行くと個体数が激減する。下画像のように見晴らしが良くコアオハナムグリが爆発的に集まっているようなシイ類の花でも、ごく少数の個体が見られたのみであった。
IMG_7774

バナナトラップも有効で、上画像シイの木に仕掛けた際、若干数の飛来が見られた。

幼虫は礫岩主体の土壌に生育し、堆積物を食している。礫岩の上に僅かに腐植質が積もっているような環境であり、人間の力を持ってしても非常に掘りにくい土壌だ。繭玉を作る空間が確保できるかすら危うい。
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急峻に生える木の根元など、地形の問題で堆積物が溜まりやすい箇所に多く観察される。
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生息地の山一つ例にとっても、海風が強く吹き荒ぶ側の斜面からは多くの幼虫が得られ、凪いでいる側の斜面からは殆ど得られないといったことがあった。成虫からすれば飛翔時に風の影響を受けない斜面側の方が繁殖に適しているように思えるが、どうも不思議だ。推測に過ぎないが、風により礫岩が風化しやすい、つまり土壌が岩状ではなく砂状に近い箇所方が生育しやすいのではないか。

4.採集

gw前後、晴れ間が除いている際に海岸沿いの生息地付近を飛翔、訪花する個体を採集、若しくはバナナトラップ等が有効。5月中はネズミモチやノバラ、トベラ等、時期が遅くなればカシワの花でも採集が可能であると推測される。生息地にはカシワやコナラが多数乱立しており、他種のように花資源に乏しい時期は必要に応じ樹液や若枝を齧り飢えを凌いでいるものと思われる。 

5.飼育

通常のマット等で産卵可能。幼虫飼育、休眠管理等は現在検証中であるが、恐らくかなり容易な部類に含まれるのではないか。余談ではあるが、ハナムグリ類の例に漏れず本種も独特の臭気を発する。決して心地良い臭いではないが、若干柑橘系のテイストが入り混じり不思議な感覚を覚える。